66話 漆黒の特急 ページ17
・
8号車手前の7号車のE室に身を隠す。
本物の火事じゃないにしろ、煙たい。
ハンカチで口を塞ぎながら、廊下の気配を窺う。
一人、そしてもう一人、部屋の前を誰かが通り過ぎ、8号車へ向かった。
そっと扉を開け、誰もいないことを確認すると、部屋を出て、8号車の角に隠れる。
誰かの話し声が聞こえた。
「初めまして。…バーボン、これが僕のコードネームです」
この声は…やはり安室さんだ。
俺の読みどおり、安室さんは黒ずくめの組織のバーボン。
角からそっと覗き込むと、白煙に紛れて、彼の背中が見えた。
そしてその視線の先には、灰原の姿。
だがその出で立ちは大人のもの。
さっきまで、本物は俺の傍にいたから、あれは誰かの変装。
俺の知らない気配だ。
「バーボン、このコードネーム聞き覚えがありませんか?君のご家族とは会ったことがあるんですが」
「ええ。知ってるわよ。お姉ちゃんの恋人の諸星大とライバル関係だった組織の一員。お姉ちゃんの話だと、お互い毛嫌いしてたみたいだけど?」
灰原の姉の恋人…諸星大…?
「ええ。僕の睨んだとおり、あの男はFBIの犬でね」
それって、赤井さんのこと…?
「組織を裏切ったあと、消されたっていうのがどうにも信じがたくて、あの男に変装し、関係者の周りをしばらくうろついて反応を見ていたんです。おかげであの男が本当に死んでいたことが分かりましたけどね」
バリバリ生きてますけどね。
「ま、変装させてくれたのは今回僕の代わりにあの男に化けてくれた仲間ですが。君がここに現れたということは、君に恐怖を与える効果は充分にあったようだ」
だから、ベルモットが変装した赤井さんの姿を見たとき、灰原はあんなに怯えていたのか…。
「では、手を挙げて移動しましょうか。8号車の後ろにある、貨物車に」
カチャリと、聞き覚えのある音が聞こえた。
おそらく今、安室さん…いや、バーボンは拳銃を突きつけた。
灰原は手を挙げて後ろへ移動する。
8号車と貨物車を繋ぐ連結部分への扉が閉まった。
足音を立てないようにそっと扉に近づき、聞耳を立てる。
・
1523人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鹿野ユズナ(プロフ) - いえ、お力になれたようでよかったです! (2019年4月25日 11時) (レス) id: f48090b258 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 鹿野ユズナさん» コメントありがとうございます!恥ずかしながら、ずっと勘違いしておりました…。次回から気をつけます!ご指摘本当にありがとうございました! (2019年4月21日 21時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
鹿野ユズナ(プロフ) - こめかみ、漢字変換が全てお米の神様になってます………… (2019年4月21日 5時) (レス) id: f48090b258 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 大福さん» コメントと嬉しいお言葉ありがとうございます!これからも読みやすく楽しい小説を目指して頑張るので、よろしくお願いします! (2019年3月13日 20時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
大福 - 楽しく、読みやすいです。続きが気になります!次の更新楽しみに待ってます。 (2019年3月12日 16時) (レス) id: 2b112b86de (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:096 | 作成日時:2019年2月11日 21時