761話 ページ12
・
「安室先生、黒瀬先生の赴任を祝して、かんぱ〜い!」
居酒屋の個室にグラスのぶつかる音が響く。
教職員20人ほどが集まって、歓迎会が始まった。
「いや〜、歓迎会やるって言ったらほとんどの教員が行くって盛り上がっちゃって!すごい大人数になっちゃったよ!」
教頭がビール片手に笑う。
「まぁ、女性教員のほとんどは黒瀬先生目当てでしょうから、気を付けてくださいね!」
教頭の言葉に、四方から女性教員のブーイングが飛んでくるが、実際ここに向かう前から視線が痛い。
誰が俺の隣に座るかで揉める声が聞こえていたので、俺は早々に安室先生に“隣いいですか?”と声をかけた。
右隣には安室先生。
左には1年生の学年主任の男性教員。
でも俺をモヤっとさせているのは、安室先生の右隣――天野先生だ。
個室に入ってすぐ、天野先生は安室先生の隣に流れるように座った。
普段職員室で隣なんだから、今日くらい他の人に譲ってやれよ――…!
…いや、他の人もダメだけど!と、ヤキモチが膨れ上がっていく。
割りと肉食系の女性なんだろうな、天野先生。
ちなみに飯田先生は俺の向かいの席に座った。
俺たちが中心の歓迎会といっても、こういう場での食事はなるべく控えたい。
でも、そうもいかないだろう。
酒があまり得意ではないふりをしてやり過ごすか。
食事も、怪しまれない程度に極力口にしないようにしよう。
さて――…賑やかな場所だがこれも仕事。
こういう場のほうが、人間の気は緩むし、口も軽くなる。
あまり得意ではないビールをちびっと飲んで、周囲に目を光らせる。
すると、机の下に下ろしていた右手に何かが触れた。
『?』
なんだ…?と思っていると、手の甲につつっと何かが這う感覚。
これは…安室先生の――、いや、零さんの指だ。
なにか…伝えようとしてる…?
その指文字に意識を集中させながらも、声をかけてくる女性陣に応対する。
――と、う、ち、よ、う、き…?
……盗聴器?
ちらりと零さんを見やる。
眼鏡の奥の鋭い瞳が一瞬、彼の隣にいる天野先生に向いた。
天野先生が、盗聴器を?
安室先生に仕掛けた?
それとも、天野先生に仕掛けられている?
どちらかがわからない状態では、下手に動くことができない。
とりあえずここは、周りに合わせてこの飲み会に溶け込みつつ…天野先生に注意しよう。
・
834人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
096 - ロマンス細胞さん» いえいえ!こちらこそこめんとありがとうございました!告白もありがとうございます(笑) (2020年2月13日 13時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
ロマンス細胞(プロフ) - 096さん» 返信ありがとうございました!(´;ω;`)めっちゃ好きです←(突然) (2020年2月12日 22時) (レス) id: 3aaa867c85 (このIDを非表示/違反報告)
096 - ロマンス細胞さん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!これからも頑張ります! (2020年2月12日 21時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
ロマンス細胞(プロフ) - 最高です。これからも頑張ってください!!楽しみに読んでます。 (2020年2月12日 20時) (レス) id: 3aaa867c85 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 赤の他人さん» ありがとうございます!これからも楽しんでいただけるように頑張りますね! (2020年2月10日 20時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:096 | 作成日時:2020年1月20日 21時