659話 紅の修学旅行 ページ10
『それより今は、今回の殺人事件について――…』
スマホを弄って暗号を解読しようとすると、着信が入った。
『あ、ごめん。電話だ。…静かにしててね』
最後の言葉で、相手が誰なのか察してくれたらしいコナンは頷いた。
『もしもし?』
《もしもし?もうホテルか?》
少し疲れたような、でも優しい零さんの声が聞こえてきた。
『うん。もうゆっくりしてるとこ。そっちは仕事終わった?』
《ああ。といっても、また明日朝早くから後処理に終われるだろうけどな。写真見たよ。楽しんでいるようで何よりだ。何も変わりないか?》
『え、あー…ホテルでちょっと事件があって。でも京都府警の人が来てくれたから、俺は先に部屋に戻ってきたとこ』
ちらっとコナンが俺を見た。
嘘は言ってないぞ、嘘は。
《事件?大丈夫なのか?》
『まぁ…ね。俺に出来ることはなさそうだったし、旅行にまで来て血生臭いのは嫌だし』
ベッドにごろんと横になって、零さんの声に耳を傾ける。
《巻き込まれていないならよかった。お前はすぐ首突っ込むから》
『職業病って言って。そっちだって俺とそんな変わりないでしょ』
電話の向こうから苦笑が聞こえてきた。
《やっぱりダメだな、声を聞くと会いたくなる》
『えっ、ど、どうしたの急に…!』
疲れているんだろう。
突然の甘い発言に思わず心臓が跳ねた。
《Aは寂しくないのか?》
『そ、…そりゃ、一人旅は寂しいけど…』
コナンが隣にいるので思わず小声になる。
《そうじゃない。僕がいなくて寂しくないのか聞いているんだよ》
『さ…寂しい、よ?』
隣でコナンが口元を押さえ、笑いを堪えているのが見えて睨みつける。
『疲れてるんでしょ?明日も早いんだから早く寝なよ!』
《ふ、はいはい。明日も楽しんでおいで。おやすみ》
優しい声で挨拶を済ませ、零さんは通話を切った。
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096 - ちぃさん» 読んでいただきありがとうございます!深く考えていただき、嬉しい限りです…!人の数だけいろんな行動の仕方があると思います。葛藤の中で得た黒瀬の決意を、これからも見守ってあげていてください! (2019年12月22日 21時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 別れたからってなにもしないのではなくて、世界を変えれないのなら影からサポートしたり守ったりするかも、、、。唯一の方法かなと思いました。 (2019年12月22日 1時) (レス) id: 13503def23 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - やっと読めました、自分ならどーするか考えました。大好きな世界の均衡を保つ為、大好きな人を守る為にも、零さんから恨まれるくらいに嫌われてから別れるかなーって。全てが終わった時にもう一度始めからやり直す選択をするかも知れないですね。 (2019年12月22日 1時) (レス) id: 13503def23 (このIDを非表示/違反報告)
096 - りんねむさん» コメントとお気遣い、ありがとうございます!一気読みお疲れさまでした!これからも頑張りますので、よろしくお願いします! (2019年12月17日 14時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
りんねむ(プロフ) - 初コメ失礼致します。ここ数日で最初から一気に読んじゃいました!とっても面白いです!無理なさらぬよう、更新頑張って下さい!陰ながら応援しております!(*^^*) (2019年12月16日 18時) (レス) id: 529938dd30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2019年11月26日 23時