587話 ページ38
目元を拭って、俺のものがなくなった部屋を見渡す。
もともと何もない部屋だったけど、こんなに広かったかなぁ…。
『…零さんを頼んだよ、ハロ』
ハロを撫で、荷物を抱えて部屋を出た。
玄関まで俺を追いかけてきたハロに胸が痛んだが、がちゃりと鍵をかけ、ポケットにしまう。
鍵くらいは、持っておいてもいいよね…。
アパートを出て、あの少年に電話をかけた。
『あ、もしもし?コナンくん?』
《Aさん?どうしたの?》
『しばらく君の実家に住まわせてもらっていいかな?』
《え?…なんだよ、また喧嘩か?》
『喧嘩ならよかったんだけどね』
俺は事情を説明した。
零さんが俺だけを忘れてしまったこと。
しばらくは風見さんの従兄弟の真白楓になること。
できるだけ、安室さんの前で黒瀬の名前を出さないで欲しいということ。
《安室さんが…!?……わ、わかった、けど…。俺だけじゃ抑えられねぇときもあるからな…》
『蘭さんや園子さんに事情を話すことは出来ないから、そこは不可抗力にする。俺と安室さんの関係を言及してきたら上手く止めて欲しい。出来る範囲で構わないから』
《でも、黒瀬Aはもう有名人だろ?偽名使ったところでバレるって…》
『そんなの、芸名でやり過ごせる。俺とあの人は一切の他人。そういうことにして』
《…なんでそんな必死なんだよ》
『…怖いのかも。俺が今のあの人に真実を告げて、拒絶されることが』
男の婚約者がいると知って、零さんがどんな反応をするのか…。
今のあの人はきっと、俺と出会う前の…この国のために全てを捧げている降谷零だ。
『あの人を守っているようで、自分自身を守ってる。…情けないよね』
《……そんなことねーよ。俺も出来るだけ協力するけど…戻るといいな。家のことは別に構わねーけど、赤井さんにもちゃんと詳細話せよ?》
『分かってるよ。…ありがとう』
電話を切って、バイクに跨ると工藤邸に向けて出発した。
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096 - さつまいもさん» ありがとうございます!頑張りますので、これからもよろしくお願いします! (2020年1月7日 11時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
さつまいも - そう言っていただけると有難いです…。最新話まで読ませていただいております。とても面白いです!寒い日が続いていますので、無理をしない程度で更新頑張ってください。 (2020年1月7日 2時) (レス) id: 13761fb567 (このIDを非表示/違反報告)
096 - さつまいもさん» いえいえ!とんでもないです!私もまだまだ勉強中なので、おかしな点がありましたらまたご指摘いただけると幸いです! (2020年1月6日 15時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
さつまいも - 返信遅れまして大変申し訳ございません(^_^;)そうでしたか…やはり口を挟むような結果になってしまい、申し訳ないです。コナンの作品中に東京駅が出ていることは初めて知りました。新しいコナンウンチクが増えました。ありがとうございます(笑) (2020年1月6日 2時) (レス) id: d0e080215b (このIDを非表示/違反報告)
096 - さつまいもさん» ご指摘ありがとうございます。架空都市として東都が使われているようですが、首都名は東京で正しいようです。実際コナンの作品中にも東京駅が出てきています。この辺ややこしくて、私も最初困惑しました(笑) (2019年12月30日 22時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2019年10月4日 13時