隠キャ、カバディ部に入部します【井浦慶】 (ページ44)

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44:汚い手③ ページ44

私は正直、怒っていた。

もちろん、人見にも、井浦さんにも怒っていない。

怒りの矛先は…

・

自分だ。

しかし、私は性格が悪い。

井浦さんを睨んで、彼のせいにしようとしている。

井浦「話せよ」

井浦さんはまっすぐ、でも優しい口調で話す。

A「遠慮します」

もう関わらないでほしい。

放っておいてほしい。

しかし、井浦さんは何も言わない。

反論しない。

井浦「……お前、損してるってよく言われるだろ」

井浦さんの言葉に、私は少し動揺した。

確かに、昔から親や友達から、損してる損してる、と言われていた記憶がある。

母「どうして…？」

A「だって…怖かったんだもん」

友達「なんだぁ、言ってくれればよかったのにー」

A「だって…何されるか分からないんだもん」

言われた時は限って…

A「ッ…」

・

井浦「1人で溜め込むなよ」

諦めた時だった。

A「……溜め込んでなんか、いません」

ごめんなさい、井浦さん。

私、頑固だから…。

人は怖い、苦手、嫌い。

でも…あなたは、違う気がした。

井浦「……じゃあ、なんで目なんかウルウルさせてんだよ」

A「ッ…！？」

私は下げていた顔を上げた。

井浦さんと目が合う。

井浦「やっぱり…溜め込んでんじゃねぇか」

井浦さんはそう言うと、私の目元を指先ですくった。