隠キャ、カバディ部に入部します【井浦慶】 (ページ25)

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25:初日① ページ25

Aが気になり出したのは、無理矢理旧体育館に連れていった帰りだった。

水澄と畦道が、何やらAの携帯を見つめている。

それを覗き見すると、俺とどこか容姿が似ている男が映っていた。

乙女ゲーというやつだろう。

Aは、ああゆうのがタイプなのか。

そう思うと、いじめたくなった。

容姿が似ているあのキャラクターを演じてみたら、Aはどんな反応をするのか。

俺は携帯でその乙女ゲーを調べて、実際にやってみた。

井浦「お前…なかなか、整った顔、してんのにな」

これは、乙女ゲー＿＿＿西園寺が、自分に自信のない主人公に向けて言うセリフだ。

二次元ではなく、会ってまだ数時間の男にこれをされたら……さぞかし面白い顔をするんだろうな。

俺はワクワクしながら、Aの顔を覗き込んだ。

井浦「ッ、…」

でも…俺の予想は大きく外れた。

俺が触れた事で動揺したのか、メガネが下に下がり、裸眼が前髪から覗く。

少し頬を赤らめ、困ったような顔でこちらを見つめる顔は…どこか幼く、艶やかだった。

その時、何故か胸が熱くなり、この違和感をどうにかしようと、とりあえず空笑いをし、冗談だと言い聞かせた。

足早に帰るAの背中を見つめながら、俺は自分の手のひらを見つめる。

さっきまで、あいつの頭が触れていた、その手に。