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しんしんと雪の降る寒い日の夜だった。
ぼうっと窓の外を見る女は雪と同様、白くつるりとした陶器のような肌をしている。
桜の花びらの様な唇から1つ吐息が漏れ、窓が曇る。
細い指で窓に触れようと女が手を伸ばした瞬間、無惨ははし、とその手を掴んだ。
｢なあに、無惨様｣
｢外に出たいか｣
｢ええ、とても｣
Aがあまりにも皮肉じみた笑みを浮かべるもんだから無惨は堪らずその唇を塞いでみた。砂糖菓子みたいな甘い味がした、鋭い歯で唇を噛めば女は一瞬顔を歪める。口元を伝う生温い血を舌で舐めとる無惨は、やはり甘いなと声を漏らす。
｢出掛けるぞ｣
｢え｣
｢鳴女｣
ベン と琵琶が鳴った。
部屋が変わる、衣装部屋の様な部屋だった。色とりどりの衣服に彩られた室内を見たAは、氷のようだった冷たい瞳に光を灯しぐるりと室内を見渡す。
｢あれが良い｣
黒地に大ぶりの赤の牡丹の花があしらわれた着物を無惨は指差す。気品あるあの光沢感から見るに絹で出来ているのであろう、華族出身の彼女はひと目でその値打ちに気づき首を横に振る。
｢なりません、あのような高価なもの｣
｢口答えするのか｣
紅梅の瞳を細めそういうもんだからAは完全に口篭ってしまった。その様子を見て無惨はけたけた笑ってみせた。
｢美しい者は一流を身に纏うべきだ｣
夢じゃないのかしらとAは思った。
この男はこんなにキザなことを言う男だっただろうか、だけれどこの男の笑った顔は嫌いじゃない。
出会ったばかりの頃、彼が“月彦さん ”だった頃のあの優しい笑みを思い出した。
｢鳴女、着付けてやれ｣
｢御意｣
｢先に出ている、支度が出来たら鳴女に飛ばしてもらうといい｣
琵琶が鳴ると、そこには無惨様の姿は無かった。
彼が気分屋な事は知っていたけれど、今回の行動は不可解でしかない、あれだけ私を外に出すまいとしていたのに、何故今更私の要望をのんでくれたのだろう。
｢ねえ、鳴女さん｣
｢どうなさいました？｣
｢私、本当にあの方が何を考えているのか検討もつかないわ｣
｢皆そうでございますよ｣
紅をひかれた彼女の唇が弧を描く。
慣れた手つきで着付けてくれた鳴女さんは｢夜風は身体にしみますのでお気を付けて｣と付け加え、コートを着せてくれた。こっくりとした色味の其れは、黒の着物をよく引き立たせてくれた。
琵琶が鳴る、気付けば私はガス灯の下に居た。
白い息が出てぶるりと身体が震える、久方振りの外の空気だった。
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舞(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ (2021年2月9日 0時) (
レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！！ (2020年11月8日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ぼたんあめ(プロフ) - この小説とっても好きです！更新応援してます♪ (2020年10月27日 7時) (レス) id: 07fb25626d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - 初めまして突然すみませんこちらのお話読ませていただいたのですが見ていてとても続きが気になりました！更新頑張ってください、楽しみにしています！ (2020年2月1日 20時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
カオリ(プロフ) - 無限城が無惨城になってますよ。気になってしまってすみません。 (2019年11月16日 23時) (レス) id: f2976f8dda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：旧華 | 作成日時：2019年11月2日 0時
