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無惨様があの女を気にかけていらっしゃるのは、稀血の持ち主だから、そうよ、そうに違いないわ。
そう思いながら堕姫は机をトントンと小刻みに叩いた。
気に食わなかった、なんの力もないひ弱な人間の小娘が無惨様の傍に居るだなんて。
(そうだなあ、お前の気持ちはよおく分かるさ、でもあの方のなす事に俺達が口を挟んじゃいけねえよ)
(でもお兄ちゃん、アタシこんなの受け入れられない!)
兄である妓夫太郎が止めようにも、堕姫の腹の虫は収まらない。
悶々と考える、彼女の頭の中に一つ良からぬ考えが浮かんだ。
「そうよ、稀血だから...たったそれだけなのよ、あの方があの女に執着する理由は」
それなら、そうでなくしてやればいい。
それだけの事よね。
あの方の血をあの女に盛ろう。
そうすれば、彼女は鬼になる。
稀血で無くなったあの女に、きっとあの方は興味を無くすわ。
(おいおい物騒な事をするのはよせ)
(お兄ちゃんは黙って、いいじゃない、あの女が鬼になれば微力ながら戦力になるでしょ?)
思っても居ない言葉だった。
妓夫太郎が何を言ったところで、聞く耳を持たぬ堕姫は簪をつけ直し襖を開ける。
「ねえ、見た?今の蕨姫花魁」
「鼻歌なんか歌っちゃって、余程気前のいいお客さんでもきたのかね」
通りすがりの芸者がそう声を漏らす程に満面の笑みを浮かべ、京極屋の看板である蕨姫花魁は通路の奥へとその姿を消した。
ーーーーーーー
どうしてあんなひねくれた事を言ってしまったんだろうと、ここに帰ってきて早々思ってしまった。
私はいつの間にあんな心無い言葉をサラリと吐けるような人間になっていたんだろう。
そう思うと、堪らなく自分に嫌悪感を感じた。
「大丈夫ですか、Aさん」
「大丈夫よ...心配をかけてしまってごめんなさい」
返答するAの青白い顔を見ると、とても大丈夫そうには見えない。
ひんやりと冷たい鳴女の手が、彼女の頬に触れた。
「気を遣うのはお辞め下さい、こんなに青白い顔をなさって....」
「鳴女さん...」
「上弦の弐様も貴女の事を本気で心配しておられました、人の世から離れ生活する貴女が悩み一つお抱えにならず生きていけるわけがありません」
Aの頭の中に、先程の童磨の言葉が浮かんだ。
嗚呼、あれは本当に心からの言葉だったんだ、だとすると私は、その気持ちを酷い形で踏みにじってしまった。
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舞(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ (2021年2月9日 0時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2020年11月8日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ぼたんあめ(プロフ) - この小説とっても好きです!更新応援してます♪ (2020年10月27日 7時) (レス) id: 07fb25626d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - 初めまして突然すみませんこちらのお話読ませていただいたのですが見ていてとても続きが気になりました!更新頑張ってください、楽しみにしています! (2020年2月1日 20時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
カオリ(プロフ) - 無限城が無惨城になってますよ。気になってしまってすみません。 (2019年11月16日 23時) (レス) id: f2976f8dda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:旧華 | 作成日時:2019年11月2日 0時