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「立てるかい?」
そんな言葉と共に差し出された手はとても青白く、ひんやりと冷たかった。
「あ、ありがとうござい...ます」
見上げた瞬間彼の顔がはっきり見えた。
柔らかそうなウェーブがかった漆黒の髪に月夜に映える白い肌、赤い瞳。
ーーーーーーこんなに綺麗な男の人、初めて。
モダンな服装に身を包んだ彼は、穏やかなその表情を崩す事なく私の耳元に顔を寄せ小さく
「この通りはガラの悪い者達が多い、君のように若く美しいお嬢さんが1人で歩くのは危険だ」
そう、耳元で呟いた。
「兄ちゃん、邪魔するんじゃねえよ。これは俺とこの姉ちゃんの問題だ」
不機嫌そうな声色の男が、男性の肩に手を掛ける。
「なあに、喧嘩?」
いつの間にか3人を囲む様に出来ていた人集りからザワザワとそんな声が聴こえてくる。
どうしよう、と焦るAとは対称的に、男性は冷静にチラリと人混みに一瞬視線を移した後、肩を掴んでいた男の手を振り払い真っ直ぐに目を見据えた。
「こんな道中で話すだなんて野暮だ、裏路地で話そう」
「ふん、お前、覚悟は出来てるんだろうなあ」
「あっ....あの...」
「君は来なくていい」
「でも、私.....」
口篭るAを見た男性は小さく声を漏らし笑って見せた。
「...三丁目の角にある喫茶店で半刻ほど待っていてくれませんか?」
「え?」
「おい!!!!いつまで喋ってやがる!!!!」
「じゃあ、また」
最後まで穏やかな声色でそう言った彼は、男と共に裏路地へと姿を消した。
今の今まで流れていた不穏な空気などまるで無かったかのように、再度流れる人の波の中。
動けずに立ち止まった私の頭の中で彼の言葉が繰り返される。
「三丁目の角にある喫茶店....」
夜風は冷たいというのに
先程彼が口を近づけた方の耳が、じんじんと熱を帯びて、熱い。
そして先程から鼓膜に響く程に脈打つ心臓。
ーーーーこんな事、初めてだった。
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舞(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ (2021年2月9日 0時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2020年11月8日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ぼたんあめ(プロフ) - この小説とっても好きです!更新応援してます♪ (2020年10月27日 7時) (レス) id: 07fb25626d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - 初めまして突然すみませんこちらのお話読ませていただいたのですが見ていてとても続きが気になりました!更新頑張ってください、楽しみにしています! (2020年2月1日 20時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
カオリ(プロフ) - 無限城が無惨城になってますよ。気になってしまってすみません。 (2019年11月16日 23時) (レス) id: f2976f8dda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:旧華 | 作成日時:2019年11月2日 0時