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「臆病者」
離された唇から最初に発せられたのは罵倒だった。
だって、鬼になんて絶対になりたくない。
私がそう思っているのを分かって、絶対に噛み付いてこないと思って彼は口付けたのだ。
結局彼の思い通りになっていただなんて。
「.....っ」
「お前、私があの女を愛していると思うか?」
コクリと首を縦に振る私を見た彼は、一瞬呆れたような顔をして見せた。
「アレはただの隠れ蓑にすぎない」
そういうものが幾つかあると、便利なんだと無表情で語る。
嗚呼。彼にとっては妻と娘すらモノ扱いなのか。
「無惨様、貴方には愛はないの?」
「愛?そんな下らない感情持ち合わせている訳が無いだろう」
冷たい言葉、冗談じゃない。
彼は本気でそう思っているんだ。
なのに、どうして
ーーーーどうしてここまで知って尚、彼の事を想うのを辞められないのだろう。
きっと彼にとって他人は、替えの利く駒でしか無くて、私の事だって、ただの暇潰しだというのに。
「悲しい人」
「なんだと」
小さな声で呟いた言葉は、どうやら彼の耳に届いていたようだ
ーーーーー悲しい人間なのは、私よね。
「いいえ、ただの独り言です」
「本当にいちいち癇に障る女だ」
すっと手が伸ばされ、咄嗟に身を縮こませるA。そんな様子を見据える無惨は、彼女の身体を己の方に抱き寄せた。
「っ...!無惨様....!」
「言った筈だ、暫くの間は殺すつもりは無いと」
「…では私を鬼にするおつもりですか?」
「その予定ならとうの昔は鬼になっている、貴重な稀血の女を態々鬼になどしない」
「そうまでして私を傍に置く理由がわかりません」
「理由など必要か?」
いい加減その質問攻めを辞めろ。と一言吐き捨てた彼が私を抱き締める力を緩める。
「それとも家族の元へ戻りたいのか?」
ドキンと心臓がはねた。
家族の元へ、帰る。
お父様やお母様達が居るあの家に?
ーーーーそうよ、皆きっと心配して居るわ。
でも、帰れば間違いなく私は顔も知らない男の人の元へ嫁ぐ事になる。
だけどそれは、もう二度と…彼に会うことも無いという事だ。
静かに首を横に振れば彼はAを馬鹿にする様に鼻で笑って襖から出ていった。
「Aさんが帰りたいと言ったところで返すおつもりなどないのでしょう?」
「随分と饒舌になったな、鳴女、私に意見するとは」
「大変失礼致しました」
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舞(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ (2021年2月9日 0時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2020年11月8日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ぼたんあめ(プロフ) - この小説とっても好きです!更新応援してます♪ (2020年10月27日 7時) (レス) id: 07fb25626d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - 初めまして突然すみませんこちらのお話読ませていただいたのですが見ていてとても続きが気になりました!更新頑張ってください、楽しみにしています! (2020年2月1日 20時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
カオリ(プロフ) - 無限城が無惨城になってますよ。気になってしまってすみません。 (2019年11月16日 23時) (レス) id: f2976f8dda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:旧華 | 作成日時:2019年11月2日 0時