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寝衣に身を包み、床に身を落としても彼女の心中は悶々としたままだった。
「幸せが約束されたも同然」とはよく言ったものだ、言ってしまえばこれはただの政略結婚に過ぎない。
幼い日から続けていた、華道や茶道等の習い事すら全てこの日の為、教養のない女は好まれないからだ。
....裕福な家に生まれ、何不自由無く生きてきた。
ーーー訳ではなかった。
「なんて退屈で、不自由な人生なの」
感情の起伏を見せてはいけない。
口を開けて笑ってはいけない。
常に雅楽代家の者である自覚ある行動をしなくてはいけない私の生活は、自由とはとても掛け離れたものだった。
そして極めつけは決められた人との結婚だなんて。
ーーーーーー私の人生なのに、私の意志とは関係なく進んでいくなんて、おかしな話。
自分だけがこんな思いをしている訳では無いのは重々承知だ。
けれど、胸の中にどこがやるせないものを感じていた。
床から身体を起こし障子に手をかける。
藤の咲き乱れる中庭から空を見上げると
やはりとても見事な満月だった。
ーーーーーーーーー
はあ
はあ
息を切らし夜の街を風を切って走った。
ごめんなさい、お父様。
私やっぱり、自由な日々が欲しい。
決められた結婚なんかじゃなく
自由に恋愛したいの。
肺がどうにかなってしまいそうだ。
こんなに全速力で走ったのなんて何年ぶりだろうか。
ひんやりとした夜風が身に染みる、羽織ものを持ってこなかったのを後悔した。
それでも夜の街はガス灯がキラキラ輝いていて、まるで夢の中の様。
家を飛びなさなければ見れなかった景色だ、そう思い余所見をしていた、刹那
ドンッ
「っ痛...!」
人にぶつかった反動でその場に尻餅をついてしまった。
「おい、痛いじゃねえか姉ちゃん。お前のせいで着物が汚れちまったよ」
如何にも柄の悪そうな男に見下ろされ身体が強ばる。
自分より一回り以上大きなその男は周りを気にすること無く私に罵倒の言葉を吐き続ける。
助けを求めようと周りに視線を移すも、誰も彼も知らぬ振りで通り過ぎて行ってしまう。
当たり前よね、面倒事に自ら首を突っ込むなんてしたくないもの。
....私の考えが甘かった。
「だんまりかよ、弁償する金がねえなら体でも売って金作って貰うしかねえな」
「そんな....」
何も為す術無くうなだれていたその時。
「よさないか」
真後ろから、そんな声がひとつ聞こえた。
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舞(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ (2021年2月9日 0時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2020年11月8日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ぼたんあめ(プロフ) - この小説とっても好きです!更新応援してます♪ (2020年10月27日 7時) (レス) id: 07fb25626d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - 初めまして突然すみませんこちらのお話読ませていただいたのですが見ていてとても続きが気になりました!更新頑張ってください、楽しみにしています! (2020年2月1日 20時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
カオリ(プロフ) - 無限城が無惨城になってますよ。気になってしまってすみません。 (2019年11月16日 23時) (レス) id: f2976f8dda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:旧華 | 作成日時:2019年11月2日 0時