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ここに来てどれだけの月日が経っただろう。
私は、まだ生かされていた。
連れてこられた当初、一体自分はこれからどうなってしまうのかと不安でたまらなかったのだが、杞憂だったのだろうか。
彼は、何か手に入ると満足してしまうタチなのか、それともただ単に忙しいのか、どちらなのか分からないが、顔を合わせる頻度はあまり頻繁ではなかった。
ーーーーーただ、気になることがひとつ。
時折、月彦さんから香る上品な女物の香水の香り。
気付かないふりをして彼の前では振舞ってみせるけれど、その度ズキリと胸が痛む。
でも、私には彼の行動を制限する資格なんてない。
「Aさん、こんな所にいらっしゃいましたか」
「鳴女さん」
「今回の作品もとても素敵ですね」
生け途中の花をちらりと見た鳴女さんが微笑みながらそう言ってくれた。
「......ありがとう」
ここに来て直ぐ、花が好きだと私が言ったその日から、会う頻度は落ちても月彦さんは欠かさず花を贈って下さるようになった。
綺麗なものを眺めているのは飽きない。でも、私はこうして贈り物を貰うよりも.......
「鳴女さん..ほんの少しだけ外に出ては駄目?」
「なりません」
想像はしていたけれどすっぱりと断られてしまった。
逃げ出そうだなんて思っていない。
きっと月彦さんが鳴女さんに私を逃がさないように口を酸っぱくして言ってるんだろう。
でも、自分は自由に出歩いているの私を閉じ込めておくなんて納得がいかなかった。
「お食事を用意したので、キリの良い所で切り上げてくださいね」
べべん
琵琶の音と共に彼女の姿が消えた。
(ごめんなさい、鳴女さん)
すっと立ち上がった私はこそこその身を隠しながら部屋を移動した。
(絶対に月彦さんが帰ってくる迄に戻るから...)
申し訳ないと思いつつもAはこそこそと出口の方へと歩みを進めた。
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舞(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ (2021年2月9日 0時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2020年11月8日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ぼたんあめ(プロフ) - この小説とっても好きです!更新応援してます♪ (2020年10月27日 7時) (レス) id: 07fb25626d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - 初めまして突然すみませんこちらのお話読ませていただいたのですが見ていてとても続きが気になりました!更新頑張ってください、楽しみにしています! (2020年2月1日 20時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
カオリ(プロフ) - 無限城が無惨城になってますよ。気になってしまってすみません。 (2019年11月16日 23時) (レス) id: f2976f8dda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:旧華 | 作成日時:2019年11月2日 0時