空を仰ぐ 4 ページ4
電線に止まっている烏達が、カーカー、と鳴いている。バッと飛び立つと、赤と青で分断された空の向こうへと悠々と飛んだ。
「……確かに空は綺麗だな」
「なー」
「だけど、オレは黒は嫌いだな」
「えー、そっかー？ 俺は黒って好きだけどなー」
ようやく絞り出した言葉は、今の自分と心情とはあまり関係ない言葉で。あの空が自分とおそ松に見えたと言ってしまえればいいのに。そんな自分の思いとは関係なしに勝手に口は動いた。
「だって黒って不純な色だろう？ 不吉な色と人は言うよな。オレ、あれわかる気がするんだ。だって、すべてが混ざり合って黒になるなんて……なんとも皮肉じゃないか。……だがな、こういう夕焼けの空をバックとした黒はなんとも美しいとオレは思う」
空を見上げながら言うカラ松の横顔を、おそ松はじっと見つめた。正面に顔を戻すと、頭の後ろで腕を組みながら言う。
「ふーん。俺はさ、そういうのよくわかんないけどさ。そう難しく考えずに綺麗なものは綺麗、好きなものは好き、嫌いなものは嫌い、でいいと思うな。だからさ、カラ松」
おそ松はカラ松の前へ回り込むと、笑顔で続きを言った。
「今、俺といるこの瞬間を楽しめよ！！」
「……そうだな！」
そう、自分がおそ松を好きであることは間違いないのだ。
いつかおそ松の隣りに自分じゃない誰かがいる未来がくる。せめて、その時まで自分は全力でこの愛しい人との時間を大切にしていこう。
夕焼けに染まった二人は帰路を歩いていった。
二人のバックには、完全には混ざらないがそれでも交差し始めた空があった。
Fin.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
チョロ松girl⊂⌒⊃ - とても、綺麗な話でした！ そして、色々と考えさせて貰いました。 (2019年7月15日 22時) (
レス) id: d9fccfe3cd (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 野口さん» 少しでも貴方の考えの参考になったのなら嬉しいです。続編でもよろしくお願いします。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 紫流さん» 私は常々人の心を動かすのが物書きの仕事だと思っています。夢に一歩近づけたかな、と嬉しくなりました。こちらこそ素敵なお言葉をありがとうございます。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 今回のもとても綺麗でおもしろかったです！ (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 新しいの読ませていただきました 今回のは読んでいて、あまり輪廻の話に興味がなかったんですが、来世でもその人を好きでいられるかというのは難しいと思いました。だって逢える確率の方がひくいもん、だから今精一杯の愛を！ってことかなぁと考えさせていただきました (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Aster | 作成日時：2016年8月30日 8時
