空を仰ぐ 3 ページ3
カラ松は自分が情けなくてならなかった。実の兄に恋をして。おそ松にだってこれから好きな人ができて結婚して、自分みたいな男じゃなく、可愛い女の子が……。
おそ松の隣りに自分以外の人間がいる様子を想像して、カラ松の胸は激しく痛んだ。自分はとてもずるいのだとカラ松はそう思った。おそ松の隣りに自分以外の人間がいてほしくないだなんて。
「あっ、カラ松ぅ、やっぱりここにいたな！」
そんなことを考えている時、カラ松の耳に話題の当事者である愛しい人の声が耳に届いた。まさかとは思いながら、顔を上げてみるとそこにはやはり愛しい人、おそ松の姿がある。自然と胸が高鳴って、カラ松は胸を熱くした。
しかし、そんな自分の胸中をおそ松に知られるわけにはいかない。取り繕いながらカラ松はおそ松に言った。
「おそ松、どうしたんだ？ オレに何か用か、ブラザー」
「ああ、はいはいそういうのは俺の肋が折れちゃうからできるだけ少なくしてねー」
そのおそ松の返しを聞いて、カラ松はおそ松のこういうところが好きなのだ、と再認識した。
おそ松は自分からなにかを奪ったりしない。いつだって、逃げ道を用意しておいてくれる。釣り堀で相談した時も、カラ松の気持ちを尊重して。自分がおそ松を傷つけてしまった時も、おそ松は「不意打ち止めてー」と言っただけであって、自分の言葉自体を否定したりはしなかった。
「でさー、カラ松ぅ、用件なんだけど、母さんがご飯だってさー」
「おお、もうディナーの時間か、マミーの料理ならなんでもおいしいからな。楽しみだぜ」
「だっろー？ そ・れ・に、献立はおまえの好きな唐揚げらしいぜ！」
「それは楽しみだ！！」
「な！ 早く家に帰ろうぜ！」
トントン拍子に家に帰ることが決まると、二人は家への道を歩き出した。
カラ松は右隣にいるおそ松の横顔をちらりと見、顔を綻ばせた。予期せず棚ぼただが、カラ松はこの状況に激しく感謝をしていた。
自分と同じ身長で体型のはずなのに、こんなに可愛く見えるのはなぜだろう。いや、もちろんのこと誰よりもかっこいいことはあるのだが。
カラ松の目にはおそ松の行動すべてが愛しく思えてならなかった。
「あっ、見てよ、カラ松ー、空めっちゃ綺麗だぜ！！」
そのおそ松の言葉に顔を上げたカラ松の目に映ったのは、先程見た赤と青で分断された空だった。その空を輝いた目で見つめるおそ松に心が痛くなる。
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チョロ松girl⊂⌒⊃ - とても、綺麗な話でした！ そして、色々と考えさせて貰いました。 (2019年7月15日 22時) (
レス) id: d9fccfe3cd (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 野口さん» 少しでも貴方の考えの参考になったのなら嬉しいです。続編でもよろしくお願いします。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 紫流さん» 私は常々人の心を動かすのが物書きの仕事だと思っています。夢に一歩近づけたかな、と嬉しくなりました。こちらこそ素敵なお言葉をありがとうございます。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 今回のもとても綺麗でおもしろかったです！ (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 新しいの読ませていただきました 今回のは読んでいて、あまり輪廻の話に興味がなかったんですが、来世でもその人を好きでいられるかというのは難しいと思いました。だって逢える確率の方がひくいもん、だから今精一杯の愛を！ってことかなぁと考えさせていただきました (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Aster | 作成日時：2016年8月30日 8時
