恋とか花とか気持ちとか。 13 ページ18
ザーッ、と松野家の洗面所で水道の水が流れる音が響いていた。皆、もう寝静まり、水の音がとても大仰に聞こえる。おそ松はそんな中、花を軽く水洗いしていた。
あの後、おそ松とカラ松が居間に入ると、いまだに寝ている一松と、その側でてきぱきと後片付けをしているチョロ松だけがいた。
チョロ松は二人に気づくとすぐに近づいてきた。
「おそ松兄さん。もう大丈夫なの？」
「ああ、大丈夫だ。片付けありがとね、チョロちゃん」
「チョロちゃん止めろ。そっか。カラ松も付き添いご苦労様」
ツッコむことも忘れずにおそ松の体調を確認すると、カラ松を労う。そして、ちらとおそ松の方を見、一瞬確認すると、カラ松の方に顔を戻し、口を開いた。
「で、カラ松。一松布団に運んでくれない？ まさか、ここでずっと片付けを頑張ってた僕と、まだ気分が優れないであろうおそ松兄さんにやらせないよね？」
「も、もちろんだ」
言ってることは正論であるので、チョロ松の嫌みったらしい態度にたじろぎながらも一松に近づく。一松の脇に右手を入れ肩を浮かせると左手を引っ張り、ちょうど右足が浮くような形にして、二階に運び始めた。カラ松の姿が廊下に消え、足音が遠のく。
と、チョロ松がおそ松に話しかけた。
「カラ松と何があったの？」
(……さっすが相棒)
チョロ松の自分限定の観察力に舌を巻く。ひゅう、と口笛を吹いた。
「やっぱ、お前にはバレちゃうか。……気にしないでくれ、お前らを困らせるようなことはしないから、さ」
チョロ松は相棒時代のときの目で自分を見つめていた。この目をしているチョロ松に、嘘はつけない。でも、下手なことも言えない。
刺激しないギリギリのラインを見極めて、言葉を紡ぐ。
チョロ松とおそ松は見つめ合った。お互いに相手をまっすぐ見つめる。絶対に目は逸らさない。
しばらく見つめ合うと、チョロ松が先に目を瞑って、はー、とため息をついた。ガシガシ、と頭を掻く。
「お前が良いならそれで良いけどさ。……あんま無理すんなよ？ お前、引き際わかんなくなってすぐ無理すんだからさ」
「……うん」
あくまで自分を尊重してくれる態度に、おそ松は感謝した。できるだけ気をつけよう、と心に留める。
「……たまには俺を頼れよ、おそ松？」
すると、またチョロ松が口を開いた。その内容に思わず目を見張る。
それは最早、弟になってしまった自分の分身のほとんどから呼ばれなくなってしまった呼び名で。
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チョロ松girl⊂⌒⊃ - とても、綺麗な話でした！ そして、色々と考えさせて貰いました。 (2019年7月15日 22時) (
レス) id: d9fccfe3cd (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 野口さん» 少しでも貴方の考えの参考になったのなら嬉しいです。続編でもよろしくお願いします。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 紫流さん» 私は常々人の心を動かすのが物書きの仕事だと思っています。夢に一歩近づけたかな、と嬉しくなりました。こちらこそ素敵なお言葉をありがとうございます。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 今回のもとても綺麗でおもしろかったです！ (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 新しいの読ませていただきました 今回のは読んでいて、あまり輪廻の話に興味がなかったんですが、来世でもその人を好きでいられるかというのは難しいと思いました。だって逢える確率の方がひくいもん、だから今精一杯の愛を！ってことかなぁと考えさせていただきました (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Aster | 作成日時：2016年8月30日 8時
