恋とか花とか気持ちとか。 12 ページ17
ホルダーの上も軽く拭くと、使ったトイレットペーパーを便器に放り込んだ。水を流し、トイレットペーパーが奥へと吸い込まれていく様子を眺める。
ある決意を固めて、おそ松はトイレのドアを開けた。
「いっ！」
すぐにドアに何かがぶつかる。どうやらドアの外に障害物、いや、カラ松がいたらしい。痛みに声を上げ、顔を上げたカラ松の顔は涙と鼻水でグチャグチャだった。
「あ、おそ松……」
ズズーッ、と鼻水を啜って言うカラ松の顔を見て一瞬、うわこいつ汚ねえ、とおそ松が思ったのは言うまでもない。カラ松のそんな様子を見たおそ松は笑いが止まらなくなった。思わず涙が出るほど大笑いをしてから、ポカンとしているカラ松に話しかける。
「どしたのカラ松ぅ。そのひっどい顔ぉ！ そんなにお兄ちゃんが心配だった？ いやあ、嬉しいねー！」
大丈夫だろうか、お兄ちゃんのところが強くなってないだろうか、と心配に思いながらも極めていつもの調子で言い切る。
カラ松はおそ松の言葉を聞くと、やっと自分の今の様子に気づいたのか、慌てながら言った。
「ち、違うこれは！ ……そう！ ソーラウと言う名の悪魔がオレを唆しただけだ！」
「どうでもいいけど、涙と鼻水拭けよぉー」
あ、と気の抜けた声を出すと、慌てて涙を拭き始めるカラ松。続けてポケットからティッシュを取り出すと、鼻を擤んだ。
チーン、と鼻水を出し切っているカラ松を微笑ましく見守りながら、おそ松は声を掛けた。
「……ごめんなカラ松。心配かけて」
カラ松は鼻を擤んだティッシュで軽く鼻を拭きながら、おそ松を見た。そして、少し笑いながらおそ松に答えた。
「ふっ、本当にしょうがない兄貴だぜ。この次男に心配をさせるとはな」
「あはは、ごめん」
二人で肩を並べて廊下を歩きながら、居間へと戻る。薄ぼんやりと光が漏れる場所へと向かって。
(兄貴、か)
そう自分は兄。そして、自分とカラ松は兄弟。ずっとわかっていたはずなのに、その事実は今更ながら重かった。
せめて、カラ松の弟だったら。甘えたりして、少しはこの気持ちをやりくりできたのに。カラ松が大切にしている弟だったら。弟、だったら。
(……こんなときまで長男の呪縛はつきまとうのか)
それはなんて皮肉なことなのだろうか。
おそ松の中でこれから先やることは決まっていた。
(どれだけこの症状が酷くなろうとも、絶対に、この気持ちを知られないようにしないと、な)
それは、とても悲しい決意だった。
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チョロ松girl⊂⌒⊃ - とても、綺麗な話でした！ そして、色々と考えさせて貰いました。 (2019年7月15日 22時) (
レス) id: d9fccfe3cd (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 野口さん» 少しでも貴方の考えの参考になったのなら嬉しいです。続編でもよろしくお願いします。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 紫流さん» 私は常々人の心を動かすのが物書きの仕事だと思っています。夢に一歩近づけたかな、と嬉しくなりました。こちらこそ素敵なお言葉をありがとうございます。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 今回のもとても綺麗でおもしろかったです！ (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 新しいの読ませていただきました 今回のは読んでいて、あまり輪廻の話に興味がなかったんですが、来世でもその人を好きでいられるかというのは難しいと思いました。だって逢える確率の方がひくいもん、だから今精一杯の愛を！ってことかなぁと考えさせていただきました (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Aster | 作成日時：2016年8月30日 8時
