恋とか花とか気持ちとか。 11 ページ16
そう思った瞬間、おそ松の顔が瞬時に赤くなった。耳が熱い。それは、紛れもなく体がそうだ、と叫んでいる証であった。皮肉にも気持ちを自覚した瞬間、症状も止まったらしい。
思い返せば、何度もそう自覚することがあったかもしれない。今日だって、最初の症状はカラ松のことが目に入ったのが始まりではなかったか。一輪目の花を吐いた後、すぐに二輪目で気持ち悪くなったのは、カラ松の声が耳に入ったからじゃなかったか。名前を呼んだからじゃなかったか。
そう考える度に、頬が熱くなる。胸が高鳴る。もう決定だった。
「…………まじかよ……」
力無く頭を押さえながら呆然と呟く。思わず自虐的な笑みが浮かんだ。
(まさか、よりにもよってあいつに？ 確かに面白くはあるけど、イタくて、弟loveで、俺の扱いが雑なあいつなんかに？)
けれど、そう思いながらもおそ松はわかっていた。
「おそ松……返事してくれよ……」
返事が返ってこないおそ松のことが余程心配なのか、涙声になりだしたカラ松の声がおそ松の耳に届く。
カラ松は、イタいけど、こんなときまでイタくなるほど空気が読めないわけではないし、弟loveで確かに自分の扱いは雑だけど、本当に困ってるときだったら親身に力になってくれる。現に一松が隣で寝ていて布団に運ばなきゃいけない状況、トド松が吐いてチョロ松が奔走するこんな状況でも、自分を慰めるため来てくれた。
こんなところが自分は好きなのだ、とわかっていた。わかっている。
でも。
(無理だろ。俺達は家族で、兄弟だ。今、自覚して、自覚させて、俺にどうしろって言うんだよ……)
便器の中を覗き込む。そこには依然として二輪の薔薇が、花がある。夢であってほしい。でも、夢じゃない。この二輪の薔薇がその証拠であった。
これは自分の想いの結晶なのだろう。兄弟に、カラ松に、恋心を抱いた、抱いていた、自分の。
便器の中に手を突っ込み、一輪、薔薇を手に取る。トイレットペーパーホルダーの上にそっと置くと、続けて二輪目も手に取る。棘が刺さる。
触ったら棘が刺さるのも、汚いのも、わかっている。
でも、この花は捨てられなかった。自分はこれからこの病気と付き合っていくことになるだろう。そんな自分が最初に吐いた花。どんな理由があろうとも、捨てられない。それにどっちみちトイレに流すことなどできやしない。
軽く花についた水滴をトイレットペーパーで拭き取り、パーカーの腹ポケットに横にして入れ込む。
恋とか花とか気持ちとか。 12→←恋とか花とか気持ちとか。 10
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
チョロ松girl⊂⌒⊃ - とても、綺麗な話でした！ そして、色々と考えさせて貰いました。 (2019年7月15日 22時) (
レス) id: d9fccfe3cd (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 野口さん» 少しでも貴方の考えの参考になったのなら嬉しいです。続編でもよろしくお願いします。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 紫流さん» 私は常々人の心を動かすのが物書きの仕事だと思っています。夢に一歩近づけたかな、と嬉しくなりました。こちらこそ素敵なお言葉をありがとうございます。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 今回のもとても綺麗でおもしろかったです！ (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 新しいの読ませていただきました 今回のは読んでいて、あまり輪廻の話に興味がなかったんですが、来世でもその人を好きでいられるかというのは難しいと思いました。だって逢える確率の方がひくいもん、だから今精一杯の愛を！ってことかなぁと考えさせていただきました (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Aster | 作成日時：2016年8月30日 8時
