恋とか花とか気持ちとか。 8 ページ13
喉につっかえを感じた。それに、……痛い。
しかし、それは風邪のときのようなウイルス性のつっかえや痛みではない。
それは、喉に突然異物が生じたような痛み、と言うのが一番正しいもので。しかも、段々段々、血の味がしてくる。それは喉の奥の方から出ていることは明白だった。
唾液でつっかえを取ろうと飲み込んでみるが、効果がない。それどころか逆に助長してしまったのか、痛みが酷くなった気がした。
……堪えられない。
「かっ……はっ……」
痛みに堪えきれなくなって、咳をする。
だが、それすらもうまくできない。
(……息が苦しい)
このままじゃダメだ。吐かなきゃ、とそう決めると、気休めのように口に手を当ててゆっくり立ち上がり、弟達に事前報告をする。
「……俺、なんか気持ちわりいからトイレ行ってくるわ」
「おそ松兄さん、飲みすぎたんじゃないの？」
チョロ松から心配そうな声が掛かる。どうやら少し酔いが醒めたらしい。
「……そうかもな」
トイレの方へと向かいながら立ち止まらずにそう答える。
扉の近くに座っていたカラ松の横を通り過ぎる。一松は酔いつぶれてしまったらしく、カラ松に尻の方を向け、軽く丸まって寝ていた。時々、「……くぁーっ、クソ松死ね」と寝言を言っている。
「昼間っから飲んでるからだよー！ うえっ、ぷ……」
「うっわ、トド松が吐いた！」
引き戸を開けると、トド松から野次が飛んだ。
しかし、次の瞬間に吐いたらしく、慌てるチョロ松の声が聞こえる。
「ティッシュティッシュ！」
「トッティー、すっげえ汚いね！！」
「お前らもう寝んか！！」
トド松に対応するチョロ松、呑気に感想を言う十四松、息子達にいい加減痺れを切らし激昂する父親。その声達全部を拒絶するように、おそ松は引き戸の扉を閉めた。
廊下に出ると、一気に静けさが襲ってくる。足の裏は冷たく、頭が冴えるような気持ちになる。このまま心地良い酔いに浸っていたい気もするが、生憎今はそんな暇はなかった。
廊下を駆け抜け、トイレのドアを開けると素早く入って閉め、鍵を掛ける。便座を上げると、便器に覆い被さった。縁を掴み、口を開けて咳をするが吐けない。つっかえが取れない。それでも咳をする。
ピチャッ、と何かが便器の水だまりの中に入った。見てみると、赤黒い塊が水に攫われて広がっていく。血だ。
(……なんだよ、これ)
自分が吐き出した血の塊を呆然と見つめる。自分の体に、何か異変が起きていた。
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チョロ松girl⊂⌒⊃ - とても、綺麗な話でした！ そして、色々と考えさせて貰いました。 (2019年7月15日 22時) (
レス) id: d9fccfe3cd (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 野口さん» 少しでも貴方の考えの参考になったのなら嬉しいです。続編でもよろしくお願いします。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 紫流さん» 私は常々人の心を動かすのが物書きの仕事だと思っています。夢に一歩近づけたかな、と嬉しくなりました。こちらこそ素敵なお言葉をありがとうございます。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 今回のもとても綺麗でおもしろかったです！ (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 新しいの読ませていただきました 今回のは読んでいて、あまり輪廻の話に興味がなかったんですが、来世でもその人を好きでいられるかというのは難しいと思いました。だって逢える確率の方がひくいもん、だから今精一杯の愛を！ってことかなぁと考えさせていただきました (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Aster | 作成日時：2016年8月30日 8時
