空を仰ぐ 1 ページ1
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ほのかに赤く染まったコンクリートの地面はさながらキャンバスだ。カラ松の影がそこに色をつけようと筆をのばしている。
カラ松はそんな地面に何とはなしに目を向けた。
(……おそ松の色だな)
そのことに自分の心が少し浮き立っていることに気づくと、カラ松は自嘲気味に笑った。
カラ松は実の兄であるおそ松にお世辞でも兄弟愛とは言えない感情を抱いている。それは、表現するならば「恋情」というものだった。それは同じ好意でも、決して実の兄に抱いてはいけない類のもので。
カラ松は当然のことにそれを兄弟に隠している。もちろん恋情を向けている実の兄にも。
好きになったきっかけ、というものをカラ松は覚えていない。いつの間にか、というのが一番正しい答えなのだった。
しかし、好きになったきっかけはわからなくても、なぜ他の兄弟ではなく、おそ松にそれを抱いたのか、はカラ松はわかっている。それは良くも悪くもおそ松が兄だからであった。
おそ松は、六つ子の長男であった。それは周知の事実であり、本人もそれはわかっている。おそ松は今になって、「兄」になってきたと他の兄弟に思われているが、そんなことはないのである。
おそ松は昔から、それこそ小学五年生の時から「兄」であった。いつだってカラ松達六つ子のリーダーで、いつもみんなの前を行っていた。自由奔放で何も考えていないように見えるけど、時に誰よりもカラ松達のことを考えて動いて。カラ松はそんなおそ松に恋、をしたのだった。
ここまで聞いてると、カラ松のおそ松への感情は「憧れ」なんじゃないか、と言う人もいるだろう。カラ松も現に好きになった初めはそう思っていた。
しかし、カラ松のおそ松への感情は間違いなく「恋情」である。
(オレと同じようでふわふわした髪、寝起きの時のどうしたらつくのか疑問のすごい寝癖、子供っぽい溌剌とした笑顔。時々、本気で憎たらしいと思うことも多々あるが、それもオレにとっては魅力だ。オレは、おそ松のすべてが好きだ)
他の兄弟には向けず、おそ松のみに向ける特別な感情。本気で怒るのだって、自分の悩みを相談するのだって、他の兄弟にはしない。そこには「好意」があり、「信頼」がある。カラ松はどうしようもなくおそ松が好きなのであった。
だから、我ながら、と言うべきかカラ松は今の自分の行動が笑えてくるのであった。
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チョロ松girl⊂⌒⊃ - とても、綺麗な話でした！ そして、色々と考えさせて貰いました。 (2019年7月15日 22時) (
レス) id: d9fccfe3cd (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 野口さん» 少しでも貴方の考えの参考になったのなら嬉しいです。続編でもよろしくお願いします。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 紫流さん» 私は常々人の心を動かすのが物書きの仕事だと思っています。夢に一歩近づけたかな、と嬉しくなりました。こちらこそ素敵なお言葉をありがとうございます。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 今回のもとても綺麗でおもしろかったです！ (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 新しいの読ませていただきました 今回のは読んでいて、あまり輪廻の話に興味がなかったんですが、来世でもその人を好きでいられるかというのは難しいと思いました。だって逢える確率の方がひくいもん、だから今精一杯の愛を！ってことかなぁと考えさせていただきました (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Aster | 作成日時：2016年8月30日 8時
