靴に画鋲を入れます【及川徹】

十八個目 ページ19

また、ある時だった。


「Aさん。持ち物見せてくんない？」


それは一般生徒は部活前、私は屋上で一人読書をしようとしていた時だった。
ゴツン、と頭を鈍器で殴られた感覚に体まで冷える。


「え……なんで？」


どうも理由が浮かばない。
なんだかんだ常に常備している画鋲は見られれば即終わりだ。
テニスラケットを背負いこっちを睨む女の子達を見つめ返す。


「ちょっと何持ってんのか気になってさ。鞄見せてよ」
「いや……いいもの入ってないし……」


やばい。やばい。どうしよう。
鞄なんて見せたら決定的な証拠が出てきてしまう。画鋲箱持ちなんて普通はおかしい。

近付いてこられる前からもうこの女の子達は見慣れた顔だと気付いていた。それ故にさらに焦りが募る。国見君に害が及ぶことはできない。


「なんか出せないもの持ってるわけ？」
「いや……」
「じゃあ早く鞄見せっ、てっ!!」


その瞬間、肩に掛けた鞄を強引にぶん取られた。
思わず理性が飛び思いきり鞄に手を伸ばし、引き合った刹那、パン、と勢いよく何かが弾け出した。

カタンと床に落ちたのは透明のケース。辺りに黄色のものが転がり、回転する。



――ああ、終わった。



「ッ、あんたやっぱり……!!」


声を荒げる女の子に思いきり頬を打たれた。

痛い。国見君も……こんな感じだったのかな。

罰かな。ごめんなさい。
というか何に謝ればいいんだろう。誰に謝ればいいんだろう。


ごめんなさい。


ごめんなさい。


最低な画鋲を許してください。



壁様。



「――なにしてるの？」

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