人間寝具 ページ1
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私には、大切な人がいる。
それはそれは大切な人。
背が高くスラリとした長い手足。
気品のある爽やかな佇まい。
子供のような可愛い笑顔。
初めて彼を目にした時、あまりの衝撃に私は金縛りにあったように瞬きすら出来ず、息を呑み、ただひたすらジッと見つめた。
中島裕翔くん、彼こそ私の運命の人だ。
ただ、彼にとってきっと私は運命の人ではない。
だって、彼はアイドル。
テレビや雑誌の向こうで微笑む彼との接点はどこにもない。
それに、彼に焦がれる女性は日本中にいる。
遠い存在。
私は彼方の人を遠くから見ているだけで幸せだった。
あの時までは。
そう、あれはライブでのこと。
あのたくさんのファンの中から、彼は私を見つけたのだ。
そして、視線を合わせ、私だけに手を振ってくれた。
その時、私は気がついた。
私達は、まだちゃんと出会ってないだけなのだ。
きっと運命の糸に導かれ、私達は必ず出会える。
そして、その時、きっと彼は気づくに違いない、私が運命の相手だということに。
そう信じて早数年、もう私は待つことが出来なくなっていた。
考えてみれば、なぜ待つのか?
そうだ、逢いに行けばいいじゃないか!
そう、きっと私を見れば、彼は運命に気づくハズ。
そして、その日から私は彼を追い始めた。
ただ、やり始めて気がついた。
どうやら先客がいる。
いつも私の一歩先に、彼を追う女性がいるのだ。
なんという女だろう。
これは世に言うストーカーではないか。
得体の知れぬ女に追い回され、何をされるかわからない恐怖にさらされるなんて。
彼の迷惑も考えられないのだろうか。
そこで私は気がついた。
こんな出会い方をしては、彼は私を運命の相手と気づかないかもしれない。
これは打つ手を変えなければ。
そんな時、私は一冊の本に出会った。
『人間椅子』
椅子の中に潜り込み、恋する女性を包み込むように自分に座らせていた椅子職人。
これだ!
私は本を手に震えが止まらなかった。
そうだ、彼の生活に溶け込み、同じ空気を吸い、彼を全身に感じることで、きっと彼も私と共にいることは自然で必然だと気づくに違いない!
でも、椅子。
いや、必ず毎日座ってくれるとは限らない。
しかも彼は体格のいい男性だ。
重みを支えきれるとは思えない。
もっと大きなゆとりのある……
そうだ、ベッドだ!かれのベッドマットの中に入るスペースを作ればいいのだ。
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はなこ(プロフ) - しろくまさん» ワンシチュかっけぇ!と挑戦してみたら結果ドタバタという汗 しろくまさんのような大御所様に読んで頂けてこちらこそ幸せです!ありがとうございます! (2023年3月7日 21時) (レス) id: c2e437d80c (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - 久々の「はなこ」節に腹を抱えて笑いました!はなこ様のお話をまた読むことができて幸せです!ありがとうございました! (2023年3月7日 19時) (レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
はなこ(プロフ) - めめめさん» めめめさん、ご無沙汰しております汗 なんて素敵な褒め言葉!こちらこそコメントありがとうございます!! (2023年3月5日 0時) (レス) id: c2e437d80c (このIDを非表示/違反報告)
めめめ(プロフ) - うわーーー!はなこさま新作嬉しゅうございます!!相変わらずキレていらっしゃる!!ありがとうございます (2023年3月5日 0時) (レス) @page22 id: 1ec0dcf065 (このIDを非表示/違反報告)
はなこ(プロフ) - ももさん» ももさん、いらっしゃいませ!そうなんです、賊の顔を見た時の鴨さんのお顔が一瞬そう見えたんですよ…(妄想が酷い)感想ありがとうございました!! (2021年11月9日 17時) (レス) id: c2e437d80c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はなこ | 作成日時:2019年9月24日 1時