ストリートミュージシャン ページ33
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今日も来てる。
俺がミュージシャンを目指して、この公園で路上ライブをするようになって早数年。
ギターの相方とボーカルの俺のユニットで頑張って来て、毎週末の土曜の夜、それなりに人が集まるようになって来た。
その足を止めてくれる人達の中に、彼はいた。
「なぁ、今日もいたな、黒王子。」
ライブ終わりの後片付けをしながら、相方が言った。
相方が気にするのも無理はない。
なにせ、その彼はいつも目の前の植え込みの縁に腰掛けて、眠っているのだ。
必死に演奏してる俺達の前で、わざわざ眠るという喧嘩を売ってるかのような態度だけでも腹が立つのに、もう一つ気になって仕方ないのが彼の飛び抜けた美貌だ。
その寝顔だけでも眠れる森の美女真っ青な美しさで、目を開けたら「バルス」なんて滅びの呪文が発動するんじゃねぇの?と相方といつも茶化しながら話してた。
しかも、いつでも全身黒ずくめという服装で、それがまた白い肌、濃いまつげに縁取られた閉じられたまぶた、赤い唇を引き立てている。
とても一般人とは思えないその風貌に、俺達は「黒王子」というあだ名を彼につけた。
「てかさぁ、あんなとこであんな美人が寝てたら危なくねぇかな?」
「いや、みんな俺達の方を向いてるし、逆に気づいてんの俺達だけだろ?」
それに実際のところ、まったく目を開けたところを見たことない訳じゃない。
俺達が演奏を始めるとやって来て座り、終わるとさっさと立ち上がって去っていく。
その時はちゃんと目を開けてるんだ。
ただ、こちらを見ることはないけれど。
しかも、むっつりとして笑顔もなければ拍手のひとつもしねぇ。
なんのつもりかわからないけれど、俺は絶対歌ってる時に目を開けさせてやるんだ、といつしか意地になっていた。
そのためには、上手くなるしかない。
その閉じた目を、驚きでひん剥かせてやる!
みてろー、と俺達は必死に練習して、相方はギター、俺は歌声に磨きをかけ腕を上げた。
結果、どういう訳か彼はさらにむっつりと、ますます目を固く閉じるようになった。
そして、そのおかげと言っちゃあなんだが、俺達は音楽関係者の目にとまり、スカウトされたのだ。
「チクショ〜!なんで寝るんだよぉ!いったい俺達の音楽に、何の不満があるってんだ!」
「毎週来てくれるってことは、俺達の演奏がキライって訳じゃないんだよな?」
「……まさか、子守唄?」
「……え、特殊だな?」
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はなこ(プロフ) - しろくまさん» しろくまさぁんっ!お久しぶりです!ええ、やぶひかなんて、こないだのWU誌はマネにしたら「なに?楽屋の再現?仕事じゃないっスね」てとこでしょうね。いや、でもあれは堪らんかったぁ… (2019年9月19日 19時) (レス) id: be0c1ceb57 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - マネさんの成長ぶり最高ですね〜。こうした優しき人々の支えがあってこそのお二人…ん?ってことは、我が推しcpもお世話になっているってことかしら。あざーすっ。 (2019年9月18日 21時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
はなこ(プロフ) - Yokoさん» Yokoさん、お久しぶりです!すっかり消えてました、私!笑 マネは世間のズレに気づいて上手いこと覆い隠してくれる人でないと。うちらみたいに萌え転がってたらアウトでしょうねぇ。羨ましいなぁ。 (2019年9月12日 23時) (レス) id: be0c1ceb57 (このIDを非表示/違反報告)
Yoko(プロフ) - マネージャーさんが静かにゆっくりと常人の感覚じゃなくなっていく様が、まさにファンが腐ってゆく過程に重なってもう、素晴らしい、の一言であります!!いーなーマネージャー。ゆとやまちゅっちゅのマジもんを間近でみられるんですもんねえ…。羨ましいなあ。 (2019年9月12日 21時) (レス) id: 1ec0dcf065 (このIDを非表示/違反報告)
はなこ(プロフ) - minasa105さん» minasa105さん!見ました見ました!あまりのタイムリーさにマジで読んだか?と疑いました!(←ない)ymさんのあの顔…全国放送忘れてますよね…ここんとこの溢れかえりダダ漏れ感。何も知らないハズの妹から「気づいちゃった」と謎のLineがくる始末…もっとやって。 (2019年7月14日 8時) (レス) id: be0c1ceb57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はなこ | 作成日時:2018年9月21日 9時