モブ子さんは見た。

2 ページ14

.


水曜日。
音楽準備室には少し劣るが、一つ階が違う窓の景色が楽しめる生徒会室の隣の小部屋で私はお弁当を広げた。


隣の生徒会室から激しい足跡がした。
この小部屋は廊下に面した扉以外に隣の部屋に通じる扉が一つある。


古い扉の鍵穴から覗くと、人望厚く生徒の鑑と名高い藪会長が山田を小さなソファに投げつけた。
そして、山田の襟首を掴み上げて耳元で何か囁くと、山田は涙を滲ませながら「ごめん…なさい…」と謝った。
が、そんなことで藪会長が許す事もなく、ネクタイで山田の手首を縛り上げ……


うわー、知らなかった。
藪会長って裏の顔はドSだったんだ。人って見かけによらないな。
私は思いがけず、人生勉強をした。



木曜日
ここのところ、強い刺激を受け続けたせいか、フラッシュバックで興奮して夜眠れず、私は4時間目に保健室のベッドにいた。


保健室の八乙女先生は、自身も丈夫ではないようで保健室に来る人の気持ちをよくわかってくれるいい先生だ。


カーテンで仕切られた向こう、扉を開けて、他の生徒が入ってきた気配があった。


「山田、また来たの？」


「ヒカ先生……苦しい。」


隣のベッドが軋む音がした。
ああ、そうだった！ここは校内でもそーゆー意味で一番熱いスポット、保健室じゃないの！
油断してたわ……。
しかも、またしても山田とは。


「ここ？……どうされたい？」


いや、私がどうしたらいいか教えてよ。
てか、八乙女先生、私がいること完全に忘れ果てていませんか？
先生の物忘れがヒドイのか、私の忍者特性が群を抜いてるからなのか。


八乙女先生の指先が放つ超絶技巧に翻弄される、カーテンに映る山田のシルエットを見つめながら、ああ、今夜も私は眠れない。





.

3→←一週間

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す