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「あれ〜〜っ 横穴が三つもあるじゃないか、竜の食道は三本もあるってことかな」
目の前にはずらっっと三つの横穴があるだけで、それ以外には何もない。
モルジアナを使う?だがこの先に先人の死体すらなければ、彼女の鼻は使えない。ゴルタスでは何か見つけても声を出せない。
クソ、とジャミルは小さく漏らす。これなら、さっきの子供を片方残しておけば良かったのだ。
それから暫く考え込むが、やがて一つの結論に辿り着く。
どいつもこいつも使えない、ならばやはり自分で行くしかない。ゴルタスを罠避けに使えば大丈夫だろう、と。
「君たち!この先は危険だ!領主たる僕が直々に調査してくるから、女・子供はここで待っているんだよ」
ジャミルはそう言うと、赤毛の少女に「その子、見張っとけモルジアナ」とだけ言い残すとさっさと横穴へ行ってしまった。
◇
「……」
「……」
沈黙に耐えかねたようにアラジンは口を開く。
「やあ!おねえさん。また会ったね。」
だがアラジンの声かけむなしく、赤毛の少女は固く口を閉ざしている。アラジンは後ろで変顔を試みるも少女はずっとムスーンとして反応はない。これにアラジンはぐるぐるとターバンを巻き直すと、
「領主さま!」
「くっ……」
少女は思わず吹き出したのを、はっとして口を押さえる。だが時既に遅し。それを見てアラジンはワ〜イと喜びはしゃぐ。
「やっと少し笑ったね〜おねいさん」
「笑ってません……」
「笑ったよ?」
「笑っていません!」
「おねえさんって〜〜〜〜笑うと美人さんだね〜」
「……」
この掛け合いが不毛だと感じたのか、赤毛の少女はムスーンと再び口を閉ざしてしまった。
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作者名:名無しさん | 作成日時:2017年12月30日 21時