第13夜 創世の魔法使い ページ23
今まで下民と見下していた子供に身体的にも精神的にも追いつめられ、ジャミルは腰を抜かして虚ろな目でぶつぶつとうわ言のようにこの僕が、この僕が、と呟いていた。
そのジャミルを見下ろしながらアリババは一息つく。もうアリババ陣営の勝利はほぼ確定したようなものだ。
アリババは大きく息を吐いてから、ジャミルへナイフを向けたまま後ろを向く。琥珀が向かって行ったとはいえ彼女も一応女性、あの化け物のような少女相手に大丈夫かと思っていたが二人は睨み合っているのか、どちらも手を出さずに一歩たりとも動こうとしない。
どうやら杞憂に終わったようで、アリババはもう一度息をゆっくりと吐いた。モルジアナもあんなに遠くにいるし大丈夫だろう、と安心して腰を抜かしているジャミルに視線を戻す。
「大人しくしろ。別に命なんか取らねえ。だからまず、アラジンの笛を返せよ!」
首元にナイフを突きつけられ、ジャミルはぐう、と唸ったかと思うと、
「モルジアナー! 今すぐ助けろモルジアナー!!」
「ムチャ言うなっての」
大声で自分の奴 隷を呼びつけるが、あの距離ですぐに来れる筈もない、とアリババは半ば呆れる。
────が、
「アリババッ!!」
「!?」
直後、ヒュンッと風を切る音が聞こえた。
ほぼ本能で頭を下げてモルジアナの回し蹴りを避ける。
「!?? とっ、たっ……」
足が髪の毛をかすめてアリババはたたらを踏む。あとコンマ数秒遅かったら、琥珀が声を発しなかったら、アリババは吹っ飛ばされ回し蹴りの威力で頭蓋骨さえ砕けていたかもしれない。
アリババがモルジアナに恐れをなして腰を抜かした光景を見て、ジャミルは嫌な笑いを浮かべる。
「おやおやどうした?観念したのかな、君ィ」
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作者名:名無しさん | 作成日時:2017年12月30日 21時