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ピチョン、ピチョンと天井から垂れてくる水音だけが響く。
そこに簡易的な基地を造りながら、アリババはなんとか一息ついた。
この横穴ならば入り口も一つだけ。自分と琥珀であの一点だけをしっかり見張っていれば大丈夫だろう。
簡単な寝所を作ってアラジンを横にしたが、体力の消耗はかなり激しく肩で息をしている状況だ。
アリババはそんなアラジンを心配そうに見つめてから、その首にかけられた金の笛に視線を移す。この笛はそこまで体力を消耗するものなのだろうか。……であれば、まだ元気な自分が吹けばいいのでは?
アリババは笛を手に持ち、内心ドキドキしながらも口を付け息を吹き込む。
笛からはスカー、とウーゴどころか音すらも出ず、何も起きなかった。
なぜアラジンに吹けて自分に吹けないのだろうか。アリババが首を傾げていると、琥珀が後ろから心底引いたような声を絞り出した。
「えっ、アリババお前……」
「そんなんじゃねーよっ!」
琥珀にあらぬ疑いを掛けられそうになり、アリババは小声ながらもキレる。
「ただよ、この笛って……アラジンがここまで体力を消耗するもんなのか?って思ってよ」
アリババの問いに琥珀は呆れたように溜め息を吐いた。
「ジンの金属器が他人に扱える訳ないだろ?他人がそんなに簡単に使えたらそもそも『迷宮』ってなんなのさ、って話になんない?」
琥珀のもっともな正論にアリババはそ、そうだよな…と項垂れる。
ふと、笛に刻まれた八芒星に気がついた。
「おっ? なんだ、このマーク」
今のアリババにはとても理解できないような紋様。さらにその周りを沿うように小さく掘られた、謎の言語。何語だろうと目をこらして見てみるが、少なくとも自分の知っているものではなかった。
これは、アラジンは読めるようなものなのだろうか。その考えが頭に浮かんだ瞬間、他のことも連鎖を起こしたようにぽんぽんと弾けてゆく。
アラジンの親、目的、人となり。今思ってみれば、アリババ────自分はアラジンのことを何も知らないではない。自分も何も話してないからそらそうか、と一人肩を落とす。
それでも、アラジンは自分と琥珀のためにここまで頑張ってくれた。だから、彼には話すべきだろうとも思った。
────話そう。
アラジンにも、起きたら色々聞こう。『迷宮攻略』は力を合わせないとできないのだから────
と、アリババ一人で物思いにふけっていてふと思う。アラジンとずっと一緒にいた琥珀。こいつはどうなんだ。何者なのだ、と。
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作者名:名無しさん | 作成日時:2017年12月30日 21時