崖っぷち家政婦です。5

NJ & JH 4 ページ14

風通しも見晴らしも抜群な場所を見つけた。

その芝生の上で横並びに座る。



NJ『うわ、ここめちゃくちゃいい気持ちだ。』


JH『最高ー！』


2人とも風を全面に受けてニコニコしている。

空気も新鮮でこれはメシがうまいぞ。


『では、さっそく。』


私はアイスコーヒー・サンドイッチを配った。


JH『食べてばっかり！』


『旅先に来て食べないとかありえません。』


NJ『ヌナ、旅行じゃないですよ。仕事ですよ。』


『いただきます！』


その後私達はサンドイッチをシェアして色んな味を楽しみながら、ただただぼーっとした。


ナムジュンさんホソクさんは時々ノートに何かを書いては遠くを見ることを繰り返している。

やだ、なんかアーティストっぽい。


そんな２人の真ん中で私はケーキにかぶりつく。



JH『…こんな日が明日も明後日も続けばいいのになぁ。』


『明日からリハーサルでしょ？』


JH『まあそうなんだけどさ、ここに飽きるまで居てみたいな〜。』


ホソクさんがニヒッと笑う。


『ふーん？』


すぐ飽きると思うんだけどな。


NJ『俺達は10代の頃から練習漬けの毎日だったんで、こういう時間を過ごしたことあまり無いんですよ。』


ああ、そうか。

今では世界で活躍するトップアイドルだけど、昔はデビューに向けてひたすら下積みをするだけの青春だったんだ。

遊びたかっただろうし、怖かっただろうな。

成功しなければ全てが無駄な努力になってしまう世界。



…本当に私は彼等と一緒に居ていいのだろうか？


こうやって大切にされればされるほど、私は不釣り合いな気がして少しずつ胸が痛んでくる。


彼等は事務所で働く全ての人達を養っている。

スタッフ達はそんな彼等を何年も支えて来たのだ。


あのメイクさん達だってそうだ。

彼等を最高に輝かせる技術を必死で勉強したのだろう。

こうして皆の努力を注いで出来上がった彼等に近づいた私を嫌うのも無理はない。

今更だけどメイクさんやスタッフさんへの態度に後悔する。



今まで自分さえ良ければそれでよかった。

でも７人に優しさや愛をもらって柔らかくなった私の心が、自分以外の人の心に触れようとしている。


私の中から込み上げる何かに押されるように涙が溢れそうになって、膝を抱いて下を向いた。


NJ『ヌナどうしました？食べすぎてお腹痛くなりましたか？』


JH『それともまだお腹空いてる？俺のケーキ食べる？』



ねえ。

私、そんなに食いしん坊なの？

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