不滅の愛を 2【煉獄杏寿郎】

56.希望の音 ページ6

　翌朝目を覚ますと、

　緋色の綺麗な瞳に自分が映る。


　宝石のように美しいから、

　私は思わず両手で彼の頬を包んで

　一層顔を近づける。


「A、おはよう。

　なんだか吸い込まれてしまいそうだな。」



「綺麗すぎて吸い込んでしまいたいです。」



　私の言葉に瞳は揺れる。



「よもや、君は素直に言うから俺の心臓がもたない。」


　杏寿郎さんは目を閉じると静かに微笑む。


　部屋には秒針の音が耳を触って

　
　幸せな時間を刻むように確かに進む。


　私も目を閉じて杏寿郎さんに告げる。



「それは私の方です。

　杏寿郎さんはまっすぐに愛を伝えてくださるので

　私は時々心臓が止まってしまうかと思います。」



　おもむろに杏寿郎さんは私の胸に耳を当てる。



「少し速いな。」



「…杏寿郎さんが、そんなことをするからです。」



「でも、しっかり動いてる。

　心地よい音だな。」



　柔らかい髪の毛、


　シャンプーのいい香りが鼻をくすぐる。



「私にも聞かせてください。」



　杏寿郎さんは私の胸から耳を離すと、


　どうぞ、というように優しく微笑んだ。




　ドクン、ドクン、ドクンと、規則正しい音が聞こえる。



「杏寿郎さんの音が聞こえます。

　希望の音がします。」



「希望の音？」



　私は杏寿郎さんの胸から耳を離すと、


　杏寿郎さんを見つめる。



「はい。

　そこに在るだけで周りを明るく照らし、

　導くような希望の音がします。


　私はこの音が好きです。


　この音を愛しています。」



　私がそう言うと、杏寿郎さんは私の右手を掴んで


　自身の胸に当てる。



「分かるか？


　先程より速くなっただろう？



　心を速くさせているのは君だけじゃないんだ。








　君の一言一句に、




　一挙一動に、





　俺の心はこんなにも加速するんだ。」

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