不滅の愛を 2【煉獄杏寿郎】

80.魅惑と優美 ページ30

早いものでもう週末か…

　私は一人になった保健室でイスに腰をかけ、

　外の景色を眺めていた。


「A先生？」


　私は不意に名前を呼ばれて

　声のした方へ顔を向ける。


「ん？」


　すると、鼻先が触れてしまいそうな距離に


　目の下の黒子が魅惑的な顔があった。

　


「わっ！？

　ど、どうしたの！？」



「あっ！すみません。

　A先生、いい匂いがしたからつい…

　俺、匂いフェチで…

　先生はなんだが優美な香りがします。

　突然失礼なことして…本当にごめんなさい！」


　いい匂い？柔軟剤の匂いかな。


「いえ、私こそ大きな声出してごめんね。

　実習1週間お疲れ様！

　実習は気をつかうから疲れるよね。」


　私は廣屋先生にソファに座るように促すと、

　あたたかいココアを入れる。


「そうですね…自分はそんなつもりはないですけど、

　毎日帰ってからすぐ寝ちゃっています。」


　バッグに忍ばせておいたお菓子を手に取ると

　ココアと一緒に机の上にそっと置いた。


「どうぞ。ちょっとしたものでごめんね。

　コーヒーの方が良かったかな？」



　廣屋先生はカップを持つと優しく笑った。



「いえ、ココア好きなので嬉しいです。

　お菓子もありがとうございます。」


　背は高いけど、愛くるしい顔をしている。


　何だかちょっと大きな犬みたい。



「そういえば、何か用事でもあった？」


　カトレアの鉢の表面が乾いていたので

　水をあげながら彼に問う。



「用事はないのですが…

　先生の笑顔に癒されたくて…」



「あっ…！」


　私はつい動揺してしまい、水を溢してしまった。



「大丈夫ですか？」


　廣屋先生はすぐに駆けつけて


　ロッカーの上に溢れた水を拭く。



「ごめんね！ありがとう。」



「Aさんは、相変わらずですね。」



　彼は微笑んで手を動かしていた。




　プルルルル…



　ふたりの会話を割くように内線が鳴り響いた。



「内線だ…ごめん、ちょっと出るね！」



「はい。」



　受話器を耳に当てると愛おしい人の声がした。

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