俺は君の�� ページ7
Aちゃんのことだ。
ここで俺が恋人だと伝えてしまったら、それを思い出せない自分を責めてしまうだろうし、無理にでも俺の気持ちに応えようとしてしまうだろう。
優しい娘だから。
決めた。
恋人同士という事は、言わない。
『1ヶ月も休んでしまって、ご迷惑をおかけしてすみません。』
「いや、気にしないでゆっくり養生してくれ。」
俺たちはその後、他愛もない話をして過ごした。
Aちゃんは10年分の記憶がなくなった以外は、何も変わらないいつも通りの彼女だった。つまり、昔からしっかりした大人びた子だったんだろう。
ニコニコ笑いながら話をするAちゃんを見ていると、胸が暖かくなった。
「さてと、そろそろ俺は帰るよ。」
あまり長居をするのも彼女の負担になるだろう。
席を立ち、上着を着こみマフラーを巻く。
『そのマフラーよく似合っていますね。』
Aちゃんが俺のマフラーを見て、そう言った。
「え…。」
『落ち着いた色で素敵ですし、暖かそうですし。』
そうだろう。これは、君が、俺のために選んでくれたものなんだから。
言葉が喉まで出かかる。
告げたい。俺たちは恋人同士なんだ。
俺は、君が大好きで。
「…これは、大切な人が、くれた物なんだ。」
本音を握りつぶすように、首に巻いたマフラーを掴みながら、絞り出すように言った。
「お大事にね。」
上手く笑えているだろうか。
Aちゃんにそう言うと、俺は病室を後にした。
やはりAちゃんに忘れられてしまったという現実は、ショックだった。
次は笑顔で来れる自信がない。
俺は、こんなに弱かったのか。
そろそろ1月も終わる。
雪が少しパラつく中、俺は病院を出て敷地の正門へ向かって歩き出す。
Aちゃんと過ごしたクリスマスが随分昔に感じる。
大晦日も、初詣も一緒に過ごせぬまま過ぎてしまったな。
その時、自分でもよく分からないが俺はなんとなく名前を呼ばれた気がして病院を振り返った。
そのまま、三階にある彼女の病室を目で辿る。
Aちゃんは窓から俺を見ていた。
それなりの距離があるので、声が聞こえる訳がないし、表情も分からない。けど、Aちゃんは俺に手を振っていた。
俺も釣られて手を振り返す。
すると、さっきまで自分の心を覆っていた暗雲が、嘘のように晴れていくような気がした。
傷ついたって、やっぱり彼女が好きだ。
恋人だと言えなくてもいい。そばに居たい。
「また来るよ。」
聞こえないだろうけど、俺はそう呟いた。
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まつ - 近藤さんの優しさや芯のある強さを繊細に描いてくださりありがとうございます！月花さんの性格や言動も、誇り高く賢さを感じてとても好感が持てました！ (4月24日 13時) (
レス) @page46 id: 9000a0584e (このIDを非表示/違反報告)
岡Ｐ(プロフ) - 素敵なお話しですね。優しく、愛情深い近藤さんの魅力が溢れ、胸ときめきながら読ませて頂きました。これからも素敵なお話し楽しみにしています。頑張って下さいね。 (2021年1月22日 4時) (携帯から) (レス) id: 8256504f4a (このIDを非表示/違反報告)
こたつむり(プロフ) - 心咲さん» やる気が出るコメント、ありがとうございます！続編はかなり遅くなるとは思いますが、必ず完成させますのでどうかお待ちくださいm(_ _)m (2018年12月6日 8時) (レス) id: 88093f805b (このIDを非表示/違反報告)
心咲 - とにかく最高!素晴らしい作品です(^^)本家の本になってくれたらと思うほどの作品です♪近藤さんファンにはたまらないです！続き楽しみにしてます♪ (2018年12月3日 10時) (レス) id: efaa18aec6 (このIDを非表示/違反報告)
こたつむり(プロフ) - ななしさん» 正しくは"力不足"でした…。ご指摘、ありがとうございます！ (2018年11月27日 23時) (レス) id: 88093f805b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こたつむり | 作成日時：2018年9月25日 0時
