太陽と月 ページ45
ズキ、という頭の痛みで俺は目を覚ました。
まだ夜中のようだ。
寝転がっているのに、なんだかフラフラする。また飲み過ぎちまったかな…。
寝返りをうつと、窓辺に座り、外を見上げるAちゃんが目に入った。
Aちゃん?あれ、なんで。
そうだ、俺は今日結婚式をして…。
がばり、と起き上がると同時にまた頭痛がした。
『近藤さん。大丈夫ですか?』
Aちゃんはそういうと、こちらに近づいて来た。
「Aちゃん…ごめん!結婚初夜だってのに、俺完全に酔い潰れちまって…。」
『あれだけすすめられたら仕方ないですよ。さ、どうぞ。』
Aちゃんはそう言って、薬と水を差し出してくれた。素直にそれらを飲み干すと、間も無く痛みも気持ち悪さも嘘のように消えていった。
「…あー。本当にこの薬はありがてぇよ。」
『そう言って貰えると作った甲斐があります。』
「Aちゃんも目が覚めちまったのか?」
『ええ、少し前に。なんとなく外を見たら、月が綺麗だったので。』
俺も窓辺に近寄り、空を見上げる。
綺麗な形の三日月だった。
「ほんとだ。見事なもんだな。」
思い返せば、Aちゃんに初めて想いを伝えた時も、彼女が無くした記憶を取り戻した時も、俺たちにはいつも月が関わっていた。
いつだったか、俺はAちゃんに"太陽のような人だ"と言われたことがある。あたたかくて、みんなを照らしてくれるからだと。
逆に俺はAちゃんは、月のような人だと思う。月がその形を変えるように、彼女も沢山の表情を俺に見せてくれる。優しい顔、怒った顔、悲しい顔、笑った顔。
何度彼女に救われただろうか。怪我をした時は勿論、御用改めで人を沢山斬って帰って来た時、俺が暗い気持ちで居る時でも、優しく包み込んで迎えてくれる。そんな姿も、宵闇の中でも凛としていつもそこに居る月のようだ。
「Aちゃん。」
『なんですか?』
Aちゃんが無邪気な顔で俺に寄り添ってくる。
ああ、愛おしい。
「月が綺麗だな。」
そう言うと、Aちゃんはにこりと笑って言った。
『ええ、死んでしまいそうなほど。』
腕を広げると、Aちゃんはぽすんとそこに収まった。ぎゅっと抱きしめると、彼女の暖かさと石鹸の香りが伝わった。
長生きできるような仕事じゃねぇのは今更だ。
でも俺は、生きてる限りこの腕の中の温もりを必ず護り抜こうと。
そう、心に決めた。
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まつ - 近藤さんの優しさや芯のある強さを繊細に描いてくださりありがとうございます!月花さんの性格や言動も、誇り高く賢さを感じてとても好感が持てました! (4月24日 13時) (レス) @page46 id: 9000a0584e (このIDを非表示/違反報告)
岡P(プロフ) - 素敵なお話しですね。優しく、愛情深い近藤さんの魅力が溢れ、胸ときめきながら読ませて頂きました。これからも素敵なお話し楽しみにしています。頑張って下さいね。 (2021年1月22日 4時) (携帯から) (レス) id: 8256504f4a (このIDを非表示/違反報告)
こたつむり(プロフ) - 心咲さん» やる気が出るコメント、ありがとうございます!続編はかなり遅くなるとは思いますが、必ず完成させますのでどうかお待ちくださいm(_ _)m (2018年12月6日 8時) (レス) id: 88093f805b (このIDを非表示/違反報告)
心咲 - とにかく最高!素晴らしい作品です(^^)本家の本になってくれたらと思うほどの作品です♪近藤さんファンにはたまらないです!続き楽しみにしてます♪ (2018年12月3日 10時) (レス) id: efaa18aec6 (このIDを非表示/違反報告)
こたつむり(プロフ) - ななしさん» 正しくは"力不足"でした…。ご指摘、ありがとうございます! (2018年11月27日 23時) (レス) id: 88093f805b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こたつむり | 作成日時:2018年9月25日 0時