寂しさと嬉しさとよく分からない感情 ページ44
局長がAさんにプロポーズをしてからしばらくして、2人の結婚式が盛大に挙げられた。
俺達真選組は勿論、松平のとっつぁんや見廻組の佐々木や今井、それに万事屋の一行や歌舞伎町の面々など、大勢が参加した騒がしくも楽しい式だった。
花嫁衣装に身を包んだAさんはとても綺麗だった。
局長は終始泣きっぱなしだったけど、Aさんはニコニコと、それでいてしゃんとしていて、頼り甲斐のある姐さん、って感じだった。
もう何次会になるのか分からないが、俺達は今屯所の中で宴を開いている。局長のみならず、他の隊士も大勢酔い潰れてしまっていたが、Aさんはまだまだ酌を受けてはそれを飲み干していた。本当にウワバミだな、あの人。
俺はそこそこセーブして飲んでいたので、まだ余裕がある。宴会場を見渡すと、隅の方で万事屋の旦那が1人盃を傾けている姿が目に入った。
旦那は離れた所に座っているAさんの方を見ていた。どこか寂しそうな、遠くを見ているような顔だった。何か気になった俺は、旦那の近くへと寄った。
「注ぎますよ、旦那。」
「ん？ああジミーか、悪いな。」
俺が酒を注ぐと、旦那も俺に注ぎ返す。2人で盃を合わせてから、くいっと酒を口につけた。
「Aさん、本当に綺麗ですね。」
「…ああ、そうだな。」
「旦那、なんか元気ないですね。もしかして、Aさんに惚れてたとか？」
「そんなんじゃねーよ。」
あれ、そうなのか。
旦那は予想よりもかなり冷静に俺に答えて、また酒に口を付けた。
「戦場で会ったガキが大きくなって再会して、今あんなに幸せそうな女になってるのを見たら…なんか不思議な気持ちになっただけだ。」
そういえば旦那は攘夷戦争の時にAさんに助けられたって話だ。城中医時代のAさんのことも知っていて、付き合いもかなり長いみたいだし、どちらかというと娘を嫁に出す父親？みたいな心境に近いのかもしれないな。
「旦那、安心してくださいよ。局長は絶対Aさんを幸せにしますから。」
「もしあいつが泣くようなことがあったら、神楽やお妙が黙っちゃいねぇからな。せいぜい気をつけるこった。」
旦那も黙っちゃいないんでしょ、どうせ。
とは思ったが口には出さず、俺はまた旦那に酒を注いだのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 160人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まつ - 近藤さんの優しさや芯のある強さを繊細に描いてくださりありがとうございます！月花さんの性格や言動も、誇り高く賢さを感じてとても好感が持てました！ (4月24日 13時) (
レス) @page46 id: 9000a0584e (このIDを非表示/違反報告)
岡Ｐ(プロフ) - 素敵なお話しですね。優しく、愛情深い近藤さんの魅力が溢れ、胸ときめきながら読ませて頂きました。これからも素敵なお話し楽しみにしています。頑張って下さいね。 (2021年1月22日 4時) (携帯から) (レス) id: 8256504f4a (このIDを非表示/違反報告)
こたつむり(プロフ) - 心咲さん» やる気が出るコメント、ありがとうございます！続編はかなり遅くなるとは思いますが、必ず完成させますのでどうかお待ちくださいm(_ _)m (2018年12月6日 8時) (レス) id: 88093f805b (このIDを非表示/違反報告)
心咲 - とにかく最高!素晴らしい作品です(^^)本家の本になってくれたらと思うほどの作品です♪近藤さんファンにはたまらないです！続き楽しみにしてます♪ (2018年12月3日 10時) (レス) id: efaa18aec6 (このIDを非表示/違反報告)
こたつむり(プロフ) - ななしさん» 正しくは"力不足"でした…。ご指摘、ありがとうございます！ (2018年11月27日 23時) (レス) id: 88093f805b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こたつむり | 作成日時：2018年9月25日 0時
