君のエゴ ページ41
スパァン!と勢いよく入り口の襖を開けると、そこには驚いた顔のAちゃんがいた。
『わっ!?』
「あっ、ご、ごめん!」
数日振りにAちゃんの顔を見て、俺は胸の奥がきゅうと音を立てるのを聞いた。
『今日食堂にいらっしゃらなかったので、もしかしてお昼を食べてないのかと…ちょっと早いですけど、夕食を持ってきたので、一緒に食べませんか?あ、もしかしてまだお仕事立て込んでました?』
Aちゃんが部屋を見て言う。
さっき整えたはずの書類は、襖を開ける時の勢いでばら撒かれてしまっていた。
「いやっ、ちょっ、丁度終わったとこ!待ってて!今片付けるから!」
俺が書類をバタバタと片付けている間に、Aちゃんは食堂から持ってきたのであろう夕食を卓に並べていく。
一通りの片付けと準備が済んで、2人で手を合わす。
「『いただきます』」
黙々と飯を食いながら、俺は彼女に何を話そうか、必死に考える。
謝るべき?プロポーズを撤回するべき?でも、気持ちは嘘じゃなかったんだ。どうしよう。
『近藤さん?』
「はっ、ええっ、な、何っ!?」
不意に話しかけられ、自分でも引くぐらい吃ってしまった。
Aちゃんはそんな俺を見て、クスクスと笑った。
『なんだか、出会った頃みたいですね。』
出会った頃。そういえば最初の頃は、緊張しちまって吃りまくったし、目も合わせられなかったな。
『私、最初は嫌われてるのかと思ってたんですよ。』
違う。最初から、好きだったんだ。
『でも、稽古したりなんだかんだで…沢山話すようになって、お付き合いするようになって。』
月夜の晩に橋で想いを告げた。
あの時の君の顔は忘れない。
『2人でたくさん一緒に出かけて、私が大変な時はたくさん助けてくれて…。』
武州に旅行も行ったなぁ。
Aちゃんが彼岸との戦いで大怪我負って、記憶まで失くしちまったこともあった。
『近藤さんといると、楽しくて、暖かい気持ちになるんです。』
それは、俺もだ。
『近藤さんには、私より相応しい人がいるかもしれません。私より、ずっと近藤さんを幸せに出来る人が。』
「Aちゃん…。」
『でも、私近藤さんのそばにいたいんです。力不足だし、こんなの完全にエゴですけど、誰かに貴方を譲ったら、ずっと後悔してしまう。』
Aちゃんと俺の目が、真っ直ぐに重なった。
『こんな私でも、結婚してくれますか?』
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まつ - 近藤さんの優しさや芯のある強さを繊細に描いてくださりありがとうございます!月花さんの性格や言動も、誇り高く賢さを感じてとても好感が持てました! (4月24日 13時) (レス) @page46 id: 9000a0584e (このIDを非表示/違反報告)
岡P(プロフ) - 素敵なお話しですね。優しく、愛情深い近藤さんの魅力が溢れ、胸ときめきながら読ませて頂きました。これからも素敵なお話し楽しみにしています。頑張って下さいね。 (2021年1月22日 4時) (携帯から) (レス) id: 8256504f4a (このIDを非表示/違反報告)
こたつむり(プロフ) - 心咲さん» やる気が出るコメント、ありがとうございます!続編はかなり遅くなるとは思いますが、必ず完成させますのでどうかお待ちくださいm(_ _)m (2018年12月6日 8時) (レス) id: 88093f805b (このIDを非表示/違反報告)
心咲 - とにかく最高!素晴らしい作品です(^^)本家の本になってくれたらと思うほどの作品です♪近藤さんファンにはたまらないです!続き楽しみにしてます♪ (2018年12月3日 10時) (レス) id: efaa18aec6 (このIDを非表示/違反報告)
こたつむり(プロフ) - ななしさん» 正しくは"力不足"でした…。ご指摘、ありがとうございます! (2018年11月27日 23時) (レス) id: 88093f805b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こたつむり | 作成日時:2018年9月25日 0時