俺のエゴ ページ40
Aちゃんが今日から復帰する。
突然2日も休みを取るなんて、よっぽど俺に会いたくなかったんだろうか。
"考えさせてください"と俯き絞り出すような声で言った後、駆け出して行ってしまったAちゃんの姿を思い出すと、胸が痛い。
俺の何が悪かったんだろう。
やっぱりまだ早すぎた?重過ぎた?
そもそもAちゃんには結婚するつもりなんかなかったのかもしれない。
鬱々とした気分で書類を処理していると、いつのまにか夕方になっていた。
「もうこんな時間か…。」
局長と局中医、普通に各々が仕事に専念していたら、顔も合わさずに1日終わることもあるのだなと今更気付く。今まで気付かなかったのは、お互い昼食なりなんなり、隙間時間を見つけて少しでも顔を見るようにしていたからだろう。
こんなに顔を見れない時間が長くなるんなら、プロポーズなんかしなけりゃよかった。
周りの男の目なんか気にして。薬指の指輪がそいつらに、"Aちゃんは俺のもんだ"って示せばいいだなんて考えて。そんなの完全に俺のエゴだ。
Aちゃんがその内他の奴の所に行っちまうかも、なんて1人で勝手に不安になって。
Aちゃんに言ったプロポーズの言葉に嘘偽りはない。でも、きっとそんな俺の器の小さい不安が言葉の裏に見て取れたから、彼女は考えさせてくれと言ったのかもしれない。
「情けねぇなぁ…俺。」
今はAちゃんは一隊士の立場だが、本来は幕臣と地位の並ぶ、筆頭城中医になれるぐらいの才能の持ち主だ。俺みたいな田舎出の侍には釣り合わないのかもしれない。そもそも年齢差も結構ある。俺みたいのより、トシや総悟みたいな年が近くてイケメンの奴らの方が見た目もお似合いだ。
それなのに、Aちゃんは俺を好きと言ってくれた。だから、調子に乗っちまったのかなぁ。
もっと近くにいたい。家族になりたい。
1年足らずの関係には重過ぎたかもしれない。
多くを望み過ぎちまった罰か。
Aちゃんがそばで笑ってくれてるだけで十分幸せだったのに。それすら、もう。
はぁぁあと盛大に溜息をついて、文机の上を片付ける。
今日はもう仕事にならない。やめよう。
同時に腹の虫がぐぅと鳴って、昼飯すら食っていなかったことに気付く。
腹は減ってるのに、食べる気力が湧かない、そんな気分だ。
もう一度溜息をついて立ち上がろうとした時、入り口から今一番聞きたかった声が聞こえた。
『近藤さん?いらっしゃいますか?』
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まつ - 近藤さんの優しさや芯のある強さを繊細に描いてくださりありがとうございます!月花さんの性格や言動も、誇り高く賢さを感じてとても好感が持てました! (4月24日 13時) (レス) @page46 id: 9000a0584e (このIDを非表示/違反報告)
岡P(プロフ) - 素敵なお話しですね。優しく、愛情深い近藤さんの魅力が溢れ、胸ときめきながら読ませて頂きました。これからも素敵なお話し楽しみにしています。頑張って下さいね。 (2021年1月22日 4時) (携帯から) (レス) id: 8256504f4a (このIDを非表示/違反報告)
こたつむり(プロフ) - 心咲さん» やる気が出るコメント、ありがとうございます!続編はかなり遅くなるとは思いますが、必ず完成させますのでどうかお待ちくださいm(_ _)m (2018年12月6日 8時) (レス) id: 88093f805b (このIDを非表示/違反報告)
心咲 - とにかく最高!素晴らしい作品です(^^)本家の本になってくれたらと思うほどの作品です♪近藤さんファンにはたまらないです!続き楽しみにしてます♪ (2018年12月3日 10時) (レス) id: efaa18aec6 (このIDを非表示/違反報告)
こたつむり(プロフ) - ななしさん» 正しくは"力不足"でした…。ご指摘、ありがとうございます! (2018年11月27日 23時) (レス) id: 88093f805b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こたつむり | 作成日時:2018年9月25日 0時