明日もし死ぬとしたら ページ39
お休み２日目。
昨夜、銀さんと長谷川さんと話して、私の心は幾分軽くなっていた。
明日からはいつも通りに出勤。次に近藤さんに会った時には、結論を出さなければいけない。
けれどその前になんとなく、あの人に会いたいと思い私は出かけた。
歌舞伎町の片隅にひっそりとある小さな墓地。
お登勢さんの旦那さんも眠るこの墓地に、あの人も眠っている。
楊。
戒名もなく、シンプルにそう掘られた墓の前に、誰かが立っているのに私は気付いた。
『お師様！』
「おや、アンタも墓参りかい。偶然だね。」
一通りの事は終わった後だったのだろう。墓石は水に濡れ、花立には仏花がいけられていた。
線香を立て、静かに2人で手を合わせる。
お師様は基本的に神や仏と言った類は信じていない。だから吉日も仏滅も気にしないし、神社や寺へ参拝することもない。けれど、歌舞伎町に楊の墓を作り、ここへだけはマメに足を運んでいることを私は知っている。
それはきっと、お師様から楊への愛の形なのだろう。
『…お師様、１つ聞いてもよろしいですか？』
「ん、なんだい？」
『なぜ、楊と夫婦になろうと思ったのですか？』
私が尋ねると、お師様は目を丸くした。
「どうしたんだい、急に。ゴリラから求婚でもされたかい？」
『い、いいから教えてください！』
「はっ、分かりやすい子だよ相変わらず。…そうさね、A、アンタ明日死ぬとしたらどうする？」
『明日？』
「そう。あの頃は攘夷戦争真っ只中、いつ死んでもおかしくない毎日だった。そんな中で楊は求婚して
きたもんだから、あたしは最初はアイツが変な奴だと思ったんだ。」
お師様は懐かしそうな顔で墓石を眺めながら言った。
「けど、いつ死ぬか分からない日々だからこそ、自分の想いに正直でありたいと思った。この求婚に返事をしないまま、どちらかが明日にでも死んだら、あたしは一生後悔すると思ったんだ。だから、受け入れた。アンタは人を優先しがちだから言っとくが、こう平和な毎日が続くと忘れがちになるがね、人間いつ死ぬか分からないんだ。だから自分の気持ちに正直に、道を選んでいくんだよ。」
自分の気持ちに正直に。
近藤さんにはもっと相応しい人がいるのかもしれない。それでも、彼は私を選んでくれている。ならば私は、力不足であっても全力でそれに応えたい。
彼と共にいたい。
明日もし死ぬとしたら、1秒でも長く彼と共にいたい。
「…スッキリした顔になったじゃないか。結婚式、楽しみにしてるよ。」
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まつ - 近藤さんの優しさや芯のある強さを繊細に描いてくださりありがとうございます！月花さんの性格や言動も、誇り高く賢さを感じてとても好感が持てました！ (4月24日 13時) (
レス) @page46 id: 9000a0584e (このIDを非表示/違反報告)
岡Ｐ(プロフ) - 素敵なお話しですね。優しく、愛情深い近藤さんの魅力が溢れ、胸ときめきながら読ませて頂きました。これからも素敵なお話し楽しみにしています。頑張って下さいね。 (2021年1月22日 4時) (携帯から) (レス) id: 8256504f4a (このIDを非表示/違反報告)
こたつむり(プロフ) - 心咲さん» やる気が出るコメント、ありがとうございます！続編はかなり遅くなるとは思いますが、必ず完成させますのでどうかお待ちくださいm(_ _)m (2018年12月6日 8時) (レス) id: 88093f805b (このIDを非表示/違反報告)
心咲 - とにかく最高!素晴らしい作品です(^^)本家の本になってくれたらと思うほどの作品です♪近藤さんファンにはたまらないです！続き楽しみにしてます♪ (2018年12月3日 10時) (レス) id: efaa18aec6 (このIDを非表示/違反報告)
こたつむり(プロフ) - ななしさん» 正しくは"力不足"でした…。ご指摘、ありがとうございます！ (2018年11月27日 23時) (レス) id: 88093f805b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こたつむり | 作成日時：2018年9月25日 0時
