彼女の胸中 ページ35
見回りから戻り縁側を歩いていると、医務室の周りの庭の草を抜く月花が目に入った。ついこないだも抜いていたばかりだろうに、マメなやつだ。そう思ってそのまま眺めていたが、よく見てみると月花の手は止まっていて、目線も宙を移ろうように、呆としていた。
「おい、月花。」
声をかけるが、返事はない。月花は呆としたままだ。
「おい…おい！大丈夫か。」
『はっ、えっ！？あ、はい。』
少し強めに声をかけると、やっと気づいたようだった。俺も庭に下りて、しゃがんだままの月花に近付く。
「…どっか具合でも悪いのか？」
先日の事を思い出し、"また寝不足か"と言おうと思った言葉を言い換える。一歩間違えればセクハラになりかねねぇ。
『いえ…あ、でも土方さん。明日から、何日かお休みっていただけますか？』
「あ？休み？」
俺は懐から手帳を出し、近藤さんや隊士の大雑把なスケジュールを確認する。
「あー…悪ぃが近藤さんは休ませられねぇぞ。」
『いえ、私1人だけで結構です。』
「お前だけか？」
毎回とは言わないが、近藤さんも月花も、休みの希望は2人合わせた日程が多かったから、俺は驚いた。
「まぁそれなら…明日から2日間なら大丈夫だ。」
『ありがとうございます。…では、仕事に戻りますね。』
そういうと月花は踵を返し、医務室へと戻って行った。
聞きたいことは色々あったが、その背中は何も問うてくれるなと言っているようだった。
「…おい、近藤さんはどうしたんだ。」
局長室をそっと覗いてみると、近藤さんはまるで死体のように部屋の隅で蹲って動かなくなっていた。声をかけるのも憚られる落ち込みようだったので、俺は縁側で寝転んでいた総悟に声をかけた。
「Aにプロポーズして振られたらしいですぜィ。」
「振られてないから！考えさせてって言われただけだから！」
総悟の呟きを聞いて、近藤さんがスパァンと襖を開けて顔を出す。
「いきなり断るとアレだからワンクッション入れて断ってるんじゃねぇですかィ。第一、結婚する気満々だったら考えさせてなんて言わねーですぜ。」
「うぐっ…！」
「だから追い討ちをかけるなっての、お前は。」
総悟を諌めて近藤さんを見ると、憐れなぐらい、やつれている。
「考えさせて…って。どういうことだろ。なぁトシ！やっぱり俺がゴリラだから！？尻毛ボーボーだから！？」
「知るかよ…。」
もうこればっかりは俺も何も口を挟めねぇ。
月花、お前1人で一体何を悩んでるんだよ、ったく。
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まつ - 近藤さんの優しさや芯のある強さを繊細に描いてくださりありがとうございます！月花さんの性格や言動も、誇り高く賢さを感じてとても好感が持てました！ (4月24日 13時) (
レス) @page46 id: 9000a0584e (このIDを非表示/違反報告)
岡Ｐ(プロフ) - 素敵なお話しですね。優しく、愛情深い近藤さんの魅力が溢れ、胸ときめきながら読ませて頂きました。これからも素敵なお話し楽しみにしています。頑張って下さいね。 (2021年1月22日 4時) (携帯から) (レス) id: 8256504f4a (このIDを非表示/違反報告)
こたつむり(プロフ) - 心咲さん» やる気が出るコメント、ありがとうございます！続編はかなり遅くなるとは思いますが、必ず完成させますのでどうかお待ちくださいm(_ _)m (2018年12月6日 8時) (レス) id: 88093f805b (このIDを非表示/違反報告)
心咲 - とにかく最高!素晴らしい作品です(^^)本家の本になってくれたらと思うほどの作品です♪近藤さんファンにはたまらないです！続き楽しみにしてます♪ (2018年12月3日 10時) (レス) id: efaa18aec6 (このIDを非表示/違反報告)
こたつむり(プロフ) - ななしさん» 正しくは"力不足"でした…。ご指摘、ありがとうございます！ (2018年11月27日 23時) (レス) id: 88093f805b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こたつむり | 作成日時：2018年9月25日 0時
