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貴方が起きたら ページ23

医務室のベッドに眠る近藤さんの額に、冷水で絞ったばかりの手ぬぐいを乗せる。
彼の体はまだ少し熱があり、呼吸も荒かった。

「おう、どうだ近藤さんの容態は。」

部屋に入って来た土方さんが、言った。

『先程薬を飲ませましたから、少し寝ていればすぐに良くなると思います。』
「そうか。」
「しっかし近藤さんの方が風邪を引いちまうとは、意外でしたねィ。」

近藤さんは無理を押して、雨の中私を探し回っていたようで、橋の上で会話した後すぐに倒れてしまった。慌てて土方さんに電話をして迎えを寄越してもらい、今に至る。

「ま、Aの記憶も戻った事だし。近藤さんの風邪も治ったら快気祝いにパーッとやりましょうや。」

そう。記憶は突然に戻った。









「いやぁ本当に今日の月は綺麗だなぁ。」

見上げると、近藤さんの顔があった。
その時、あの月夜の夢が脳裏に浮かび上がり、ノイズがかかっていた声や、ぼやけていた男性の顔が鮮明に視えた。
あの男性は、近藤さんだ。
その瞬間からグルグルと、テープを高速で巻き戻すかのように、彼岸と戦ったこと、近藤さんと過ごしたクリスマスのこと、武州へ行ったこと、色々な思い出が頭をよぎり、自分の中の10年間の空白が埋まった。

ふと気付くと、慌てふためいて何か言っている近藤さんへ、あの月夜と同じ返事をしていた。

近藤さんは私の返事に驚いて、何か話そうとパクパクと口を開いた後、急に倒れてしまったのだった。






『本当に、皆さんにはご迷惑を…。』
「気にすんな。お前はちゃんと仕事をしてくれていたし、俺達には大した迷惑はかかってねぇ。」

けど。と、土方さんは続ける。

「そこの大将はかなりヤキモキしていたみてェだからな。俺達に謝る分は、そっちに回してくれ。」
『そう…みたいですね。』

記憶がなかった間のことも、しっかり覚えている。
近藤さんが私とまた一から信頼を築こうとしてくれていたことも。

「近藤さんが目を覚ましたら教えてくれ。看病を頼むぜ、局中医さんよ。」

そういうと土方さんは、沖田さんに"行くぞ"と声をかけ、連れ立って部屋を出て行った。

私は近藤さんのベッドのとなりに椅子をおき、そこに腰掛ける。
近藤さんは、薬が効いてきたようで先程より熱も呼吸も落ち着いていた。

そっと彼の頬に触れる。
私はどうして、この人の事を忘れてしまっていたのだろう。近藤さんが目を覚ましたら、謝らなくては。

謝って、それから、大好きだという事を伝えたいと思った。

もう忘れない→←見えぬともそこに月は在る



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まつ - 近藤さんの優しさや芯のある強さを繊細に描いてくださりありがとうございます!月花さんの性格や言動も、誇り高く賢さを感じてとても好感が持てました! (4月24日 13時) (レス) @page46 id: 9000a0584e (このIDを非表示/違反報告)
岡P(プロフ) - 素敵なお話しですね。優しく、愛情深い近藤さんの魅力が溢れ、胸ときめきながら読ませて頂きました。これからも素敵なお話し楽しみにしています。頑張って下さいね。 (2021年1月22日 4時) (携帯から) (レス) id: 8256504f4a (このIDを非表示/違反報告)
こたつむり(プロフ) - 心咲さん» やる気が出るコメント、ありがとうございます!続編はかなり遅くなるとは思いますが、必ず完成させますのでどうかお待ちくださいm(_ _)m (2018年12月6日 8時) (レス) id: 88093f805b (このIDを非表示/違反報告)
心咲 - とにかく最高!素晴らしい作品です(^^)本家の本になってくれたらと思うほどの作品です♪近藤さんファンにはたまらないです!続き楽しみにしてます♪ (2018年12月3日 10時) (レス) id: efaa18aec6 (このIDを非表示/違反報告)
こたつむり(プロフ) - ななしさん» 正しくは"力不足"でした…。ご指摘、ありがとうございます! (2018年11月27日 23時) (レス) id: 88093f805b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こたつむり | 作成日時:2018年9月25日 0時

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