見えぬともそこに月は在る ページ22
Aちゃんを追って、俺は歌舞伎町に来ていた。
真っ赤な顔になって飛び出して行った彼女を思い出す。本当に、あの時は下心も何もなかった。けどそんなのは受け手側が決めることで。
ここ最近は、Aちゃんとまた仲良くなれたと過信しているところもあった。その過信が、知らないうちに彼女を傷つけちまってたのかもしれない。
街中を足早に過ぎていく。
途中で雨もとうとう降ってきた。
何軒かAちゃんと行ったことのある店や場所を廻ったが、姿は見つけられなかった。
あと彼女が行くとしたら何処だろう。
「近藤様。そんなに慌てて、どうされました？」
声のした方を見ると、翠色の髪の女性が飲み屋の暖簾を掲げていた。いつのまにか万事屋の所まで来ていたようだ。この女性は、確か下のスナックの従業員。
「ひょっとしてA様をお探しですか？」
「ここにいるのか！？」
思わず彼女に詰め寄る。
「いえ、この先を歩いて行かれました。屯所へ戻ると仰いながら、逆方向へ行かれたので不思議だったのですが…。」
「そうか、ありがとう。恩に着る！」
俺は彼女にそう礼を言い、Aちゃんが行ったという方へ駆け出した。
パシャパシャと水を跳ね上げながら、川沿いの道を走って行く。だいぶ息が上がって、体も熱い。
川を渡す橋の上に誰かいるのを見つけて、俺の足は止まった。
ここは。
橋の上にいる彼女は向こう側を向いていて、こちらに気付くよしもない。
音を立てないように、彼女にそっと近づく。
Aちゃんはつま先から頭のてっぺんまでびしょ濡れになって、伏し目がちに水面を見つめていた。
この橋は、俺と彼女にとって大切な場所。
記憶がないのに、無意識にここに来たのだろうか。Aちゃんの無意識の中に、恋人としての俺との思い出が、少しでも残っているのだろうか。
そんな淡い期待をしてしまう。
Aちゃんが濡れないよう、そっと傘をそちらへ傾ける。
「いやぁ本当に今日の月は綺麗だなぁ。」
どうしてそんなことを言ったのか、自分でもよく分からない。まだ昼間だし雨だし、月なんて欠片も見えやしない。
あの日の思い出をなぞりたかったのか、それともただ君に想いを伝えたかったのか。
Aちゃんを見ると、彼女は驚いたように目を丸くしていた。
「あっ、いやっ、今のは…。」
いきなりこんな事を言って、混乱させてしまったかもしれない。なんて言い訳しようか思考を巡らせていると。
『死ん…でも…いい、くらい？』
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まつ - 近藤さんの優しさや芯のある強さを繊細に描いてくださりありがとうございます！月花さんの性格や言動も、誇り高く賢さを感じてとても好感が持てました！ (4月24日 13時) (
レス) @page46 id: 9000a0584e (このIDを非表示/違反報告)
岡Ｐ(プロフ) - 素敵なお話しですね。優しく、愛情深い近藤さんの魅力が溢れ、胸ときめきながら読ませて頂きました。これからも素敵なお話し楽しみにしています。頑張って下さいね。 (2021年1月22日 4時) (携帯から) (レス) id: 8256504f4a (このIDを非表示/違反報告)
こたつむり(プロフ) - 心咲さん» やる気が出るコメント、ありがとうございます！続編はかなり遅くなるとは思いますが、必ず完成させますのでどうかお待ちくださいm(_ _)m (2018年12月6日 8時) (レス) id: 88093f805b (このIDを非表示/違反報告)
心咲 - とにかく最高!素晴らしい作品です(^^)本家の本になってくれたらと思うほどの作品です♪近藤さんファンにはたまらないです！続き楽しみにしてます♪ (2018年12月3日 10時) (レス) id: efaa18aec6 (このIDを非表示/違反報告)
こたつむり(プロフ) - ななしさん» 正しくは"力不足"でした…。ご指摘、ありがとうございます！ (2018年11月27日 23時) (レス) id: 88093f805b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こたつむり | 作成日時：2018年9月25日 0時
