近藤 勲の恋人は局中医 弐【銀魂】

ミトンの手袋 ページ13

「あっ、Aアル！Aー！」

街を歩いていたら神楽が突然そう言ったので、思わず立ち止まってその視線を追う。

見れば、薬局の前に買い物を終えたらしいAがいた。

『あ、こんにちは。』
「こんにちは、Aさん。もうすっかり元気そうですね！」
『はい。もうだいぶ歩けるようになりました。』

神楽と新八に続いて、俺もAに声をかける。

「よぉ。」
『坂田さんもこんにちは。』
「坂田さんじゃなくて、銀さんって呼べって。」
『あ、ごめんなさい…銀さん。』

記憶は相変わらず戻らないAだったが、俺達はそれなりに親しくまた話せるようになっていた。

「買い物か？」
『はい。包帯やら消毒液やらの備品を。』

Aはそう言ってビニール袋を持ち上げて見せる。
3月に入りだいぶ暖かくなってきたっていうのに、Aの左手はミトンタイプの手袋をしたままだった。片手だけのそれは、恐らく無くなった指を隠すためのものだろう。

「お前それ、夏になったらどーすんの？」

手袋を指差して言うと、Aは困ったように笑った。

『実は悩んでるんです、中々合う義指がなくて。そもそも動かない指なんて付けてると邪魔なんですけど、かといって何もないと見た目がアレですし…。』
「大変アルな。」
『まぁ夏までにはなんとかいいのが見つかれば良いなぁ、と。…あ、ごめんなさい！もうこんな時間だ戻らないと！』

時計を見たAはそう言って、慌てて屯所へ向かって歩いていった。

「Aさん、まだまだやっぱり、大変そうですね…。」
「そうアルな…。」

段々と遠くなるAの姿を見て2人が呟く。

死にかけた時の姿から思えば、Aはかなり良くなった。けど、記憶は戻らねェし、体だってまだ全快じゃないんだろう。さっきだって慌ててた割には、走ることは出来なかったみてェだし。

俺は昔、死にかけた所をアイツに助けられた。
今度は俺が、受けた恩の分、何か返してやれねーもんかな。

そんな事を考えていると、ふと、頭の中で電球がピカッと光るように、ある考えが浮かんだ。

「神楽、お前ハゲの父ちゃんに連絡とれるか？」
「パピー？こないだの手紙には、しばらく死腐土星にいるって書いてあったケド…。」
「おーし。じゃあ帰ったら、俺の言う内容、手紙に書いてハゲ親父に送ってくれねーか。」


上手いこといくかはわかんねぇが、やってみる価値はあるだろう。

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