そのよんじゅうなな ページ3
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ちょっと待て、まだ心の準備が出来てねぇんだけど。
心の中でダラダラと冷や汗をかきながら、彼女の後ろ姿を見る。
食堂はトレーを持って左から右へと進み、料理を受け取るシステムなので、前後になったからには、そのまま横並びになってしまう。
話しかけない手もあるし、研磨を間に入れる手もあるが、彼女と一緒に居れる数少ないチャンスは逃したくないと思う自分もいて。
いつもならもっと素直に嬉しいはずなのに!!!
なんて、昨日の自分を恨んでいれば、不意に彼女が振り返り、バッと目が合う。
「おはようございます」
彼女はニッコリといつもの笑顔を俺に向けた。
「おはよ。昨日はよく寝れた?」
って、何自分から昨日の夜の話振ってんの!?
ダラダラと冷や汗が止まらない心の内がバレないように、二マっと笑って誤魔化す。
「お陰様で。ありがとうございました」
「いーえ」
いつもと様子が全く変わらない彼女に、なんだ、俺の思い過ごしか、なんてホッと胸をなでおろした。
その時、
「黒尾先輩って意外とロマンチストですよね」
と、彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべて言い放つ。
「…え?」
「それともチャラ男はみんなロマンチストなんですかね?」
恥ずかしさからぐんぐんと顔に熱が集まるのが分かる。
そんな俺の反応を楽しむように、彼女はさらに笑みを濃くした。
「あと、ちょっと厨二っぽいですよね」
「あー、もう…恥ずっ」
そうからかって笑う彼女と目を合わせられなくて、片方の手で目を覆い、顔を逸らす。
そんな俺を見て、また面白がる彼女が可愛くて、でも恥ずかしくて、半ばやけくそになりながら顔を料理に向けた。
「…何、Aちゃんも血液嫌いなの?」
「血液?」
「試合前にやってるやつ。研磨に馬鹿にされた」
「あぁ、私は別に嫌いじゃないですよ」
想像していたのとは違うその言葉に、料理を受け取る手を止め、思わず彼女の方を向く。
「最初はビックリしましたけど、プレーを見てたら本当にその通りだなって思って」
割と好きですよ、なんて淡々と続ける。
まだまだ彼女のことは知らないし、出会って三ヶ月くらいしか経っていないが、こういう淡々とすました顔で言う言葉は、彼女の本心だということは知っている。
だからか余計に嬉しくて。
俺は思わず笑みを零す。
「まぁ、ユニフォームも赤いですしピッタリですよ」
「うん、ありがと。嬉しい」
そう言えば、彼女は少し不思議そうに俺を見た。
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mifulu(プロフ) - 宇宙。さん» ありがとうございます! そう言って頂けてとても嬉しいです! 他のハイキューキャラの小説もいつか作ろうと思っているので、また読んで頂けると嬉しいです(´˘`*) (2020年6月15日 7時) (レス) id: 78d3fcb26b (このIDを非表示/違反報告)
宇宙。(プロフ) - あの!!最高でした!!黒尾先輩がめっちゃ黒尾でした(?)推しの最高な物語読めて嬉しいです、ありがとうございました。もしよろしければツッキーとか影山とか、あかーしとか、書いてくれると嬉しいです! (2020年6月15日 3時) (レス) id: 68b0101532 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 伽音さん» ありがとうございます! そのお言葉で、私もニヤけてしまいます笑 これからも楽しんで貰えるような作品をお届け出来るよう、頑張ります。 (2020年6月4日 22時) (レス) id: 856ce52b7f (このIDを非表示/違反報告)
伽音(プロフ) - 面白くて、ニヤケながら86話を一日で読んでしまいました!良い小説ですね!お疲れ様です!これからも応援してます! (2020年6月4日 19時) (レス) id: b1d06a9201 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - ルだ子さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます! 楽しんで頂けたようで幸いです(´˘`*) まだ制作中ですので、もう少しお待ち下さい。 (2020年6月1日 21時) (レス) id: 856ce52b7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mifulu | 作成日時:2020年4月26日 18時