そのじゅうさん ページ13
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ちょいちょいっと手招きをして、彼女を連れてきたのは二階のギャラリー。
まだ少し戸惑いぎみの彼女を連れ、烏野と森然のいるコートが烏野側から見れるような場所に立つ。
「何でここに?」
「何事も百聞は一見にしかず。プレイヤーもそうだけど、誰かのプレーを客観的に見るっていうのが、初心者にとって一番大切だ」
「客観的に、見る…」
いつになく真剣な顔持ちでコートを見る彼女は、何だか違う人のように見える。
「まぁ、俺は烏野に詳しくねぇからあれだけど、Aちゃんは慣れてるとこの方が見やすいだろ?」
「はい、ありがとうございます」
「どういたしマシテ。お、そろそろ始まるぞ」
ピーッと笛がなり、ボールが動き出す。
あれから二週間しか経っていないが、一体烏野はどうなったのか。
それが気になって、じっとボールを見つめる彼女の横で、俺もその試合を見守る。
ちょこちょこと指さして、あのブロックの種類だとかレシーブの種類だとか、サーブの種類だとかを彼女に教えながらも、
…すげぇ、二週間でこんなに変わんのかよ。
というのが、俺の本音だった。
三番のジャンプサーブに、シンクロ攻撃、リベロからのセットアップに、何かが変わったような変人速攻。
面白い程にズレて噛み合っていないが、この二週間で武器を沢山準備してきた貪欲さと雑食性に、思わず笑ってしまった。
…これは負けてらんねぇ。
メラメラと勝手に燃える闘争心を他所に、彼女はこの場にいる誰よりもその試合にかぶりついて見ていた。
チラリとバレないように覗いてみれば、見たこともないほど目をキラキラさせて、生き生きとした表情で、試合の動向を伺っている。
点が決まったら、少し顔を綻ばせて。
点を取られたら、少し悔しそうに顔を歪ませて。
ギャラリーの上からみているが、彼女も一緒にコートの上に立っているかのようにさえ、見えてくるから不思議だ。
「…何、笑ってるんですか?」
思わず笑っていた俺に、彼女は怪訝そうに俺を見る。
「いや、進化してんなぁって思って」
そう言えば、
「カラスは雑食ですから」
と、自分の事のように誇らしげにコートを見る。
「私も負けないように頑張らないと」
自分に言い聞かせるように放たれた小さな呟きを、俺は聞き逃さなかった。
そして、まるで烏野のチビちゃんのように目をギラリとさせる。
手元の十分に頑張りの見えるノートは、俺の心に深く印象づいた。
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mifulu(プロフ) - るさん» コメントありがとうございます! そう言っていただけて嬉しいです。 (2020年4月18日 12時) (レス) id: ab7a8cd136 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 星猫さん» コメントありがとうございます! ここではなんですので、良かったらボードなどで話しかけて下さると嬉しいです。 (2020年4月18日 12時) (レス) id: ab7a8cd136 (このIDを非表示/違反報告)
る - すごく面白いです、早く続きが読みたくなります (2020年4月18日 9時) (レス) id: 3219097ab0 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 知ってるアニメは何ですか? (2020年4月13日 18時) (レス) id: e8084d140d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mifulu | 作成日時:2020年4月6日 20時