ぶっきらぼうに愛を。[完] ページ23
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それから五年後、私は土方さんに呼ばれて屯所に来ていた。
湯気が上っているお茶を飲みながら、目の前に座る土方さんを見つめる。
呼び出しておいて何も言わない土方さんを不思議に思っていると、急に後ろの襖が開けられた。
その音に私が振り向くよりも先に、頭上から声がかけられる。
「ただ今戻りやした」
私はその声に驚いて声の主を見上げた。
「そう、ご?」
そう呼べば、彼はいたずらっこのような笑みを浮かべて、
「ただいま、A」
と言う。
そんな彼の姿に堪らなくなって、荷物を持っているのも気にせず、私は彼に抱きついた。
急な事で少しよろめくが私をしっかり支え、荷物を下に落とすと腕を私に回す。
二ヶ月ぶりの彼の匂いと温もりに、思わず目を瞑る。
「総悟、お帰りなさい!!」
「ただいま」
「連絡くれれば、駅まで迎えに行ったのに!」
「驚かせたかったんでィ」
その言葉が嬉しくて、私は彼の胸に顔を埋めた。
「…ばか。十分驚いたよ、これで満足?」
「いや、満足じゃねェ」
「え?」
そう言うと、彼は私をそっと離して私の手を握った。
赤い二つの瞳が、まっすぐ私の目を見つめる。
私は、何か重要な事なのか、とゴクリと唾を飲み込んだ。
「もう一つ、Aを驚かしてェんでィ」
不思議に見つめていると、私の手を離して片膝をついてしゃがんだ。
そして、何かをポケットから取り出す。
…それはまさか!
その小さい箱から出てきたのは、宝石がキラキラと輝く指輪。
彼はまるで王子様のようにそれを差し出しながら、ゆっくりと話し始める。
「京から帰ったら、まずはこれを一番に言おうってずっと決めてやした。
この五年間、不安とか悲しい思いとか、させてきちまったと思う。
でもその分、これから毎日笑顔で幸せにするって約束しやす」
彼は緊張で少し顔を強張らせながら、最後の言葉を言う。
「だから、俺と結婚してくれやせんか?」
あまりに嬉しくて声が出ず、私は何度も首を縦にふる。
そんな私を見て、嬉しさに少しの不安を混ぜた顔で私を覗き込む彼。
「いい?」
「…うん。こちらこそお願いします、です」
そう言った声は涙で震えていた。
私は彼に指輪をはめてもらい、私たちは再び抱き合う。
「おめでとう」
そんな私たちを見て、土方さんはそう笑った。
「ありがとうございます!」
「じゃ、旦那のとこにも報告しに行かねェと」
「うん」
そう言って繋いだ手が離れないよう、強く強く握りしめた。
[完]
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mifulu(プロフ) - 吉羅さん» 最後までお付き合い頂き、ありがとうございます! (2019年9月13日 11時) (レス) id: 8b6c4aa189 (このIDを非表示/違反報告)
吉羅 - すごく泣けます!(泣いてないけどw)沖田が手紙と花束を渡すとこ、あれが1番良いです。結婚完結もよかったです!これからも頑張ってください!! (2019年6月3日 16時) (レス) id: 2c9031588c (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 金欠女子wさん» 読んでいただいて、ありがとうございます! (2019年1月10日 22時) (レス) id: f591e17e69 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - すずさん» いつも、ありがとうございます! (2019年1月10日 22時) (レス) id: f591e17e69 (このIDを非表示/違反報告)
金欠女子w(プロフ) - 更新お疲れ様です! (2019年1月10日 21時) (レス) id: 5ee93ef12b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mifulu | 作成日時:2018年11月8日 23時