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行き場のない自分 ページ17

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俺は無我夢中で京を走り回った。
沢山の廃工場、荒れ果てた家屋に手当たり次第に乗り込んでは外れての繰り返し。
その度に焦っていく心を抑えながら、俺はようやく犯人がいると思われる荒れた家屋に辿り着いた。

その家屋に臆せず入り込み、敵が気付く前に斬りかかる。
そうすれば、そいつらは俺に気づいて斬りかかるが、俺はそれを軽く躱して斬り捨てる。

足元の水溜りに写った俺の顔は、目をぎらつかせ妖しく笑う、まるで獣のようだった。
俺はそれを蹴って前に進む。

奥にあった扉を開いて思っていたよりもドスが効いてしまった声をかければ、敵が驚いたようにこちらを振り向く。

俺はその間を通り抜け、目を見開いて俺を見つめるAのそばへと近づく。
はだけている着物に、敵への憎悪を募らせながら彼女の縄を解き、そっと俺の上着を被せた。

彼女がもし、さっきのような俺の顔を見たら、そう思うととても怖かったからだ。

彼女がそっと頷くのを確認して、その場にいた敵を思うままなぎ倒していく。
心の中の獣が暴れだしたように理性を無くして。

全ての敵を倒した後Aに事情をきくと、彼女は無理したように笑う。
その肩は僅かに震えていた。


目に涙溜めながら、笑ってんじゃねェよ...。


彼女を安心させたくてそっと抱きしめようとしたその時、パトカーの音が聞こえて俺はさっと離れる。

腰を抜かしたAを背負いながらたわいない話をしていると、彼女はそっと俺の肩に顔を埋めた。
背中から何となく彼女の恐怖心を感じて俺が声をかければ、彼女は静かに泣き始めた。

じわりと広がっていく涙の温かさも震えて泣く彼女のか弱さも伝わってきて、少しでも楽になればとゆっくりゆっくり歩いた。


そして今日──依頼最終日。
俺はAを連れていった部屋の前で待機していた。

ポケットに、二年ぶりに役目を果たそうとしているネックレスの箱をいれて。


最後の最後、自分の気持ちを伝えよう。
これがきっと、最後のチャンスだろうから。


その箱に添える手に、キュッと力が篭った。

心臓がいつもよりも早く脈打って、らしくないなと少し息を吐いた。

すると、背後から上様の声が聞こえる。

「これからも余を支えてくれぬか?」


...は? それって、


「余の本当の妻になって欲しいのだ」


ライバルが上様って...そんなの、勝てる訳ねェじゃねェか...。

俺はそっと立ってその場から立ち去る。
一人警備を残して、自分の部屋に入って座り込んだ。

人の上に立つ人はやっぱり素晴らしい人→←温もり



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設定タグ:銀魂 , 原作無視 , 沖田総悟   
作品ジャンル:恋愛
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mifulu(プロフ) - 吉羅さん» 最後までお付き合い頂き、ありがとうございます! (2019年9月13日 11時) (レス) id: 8b6c4aa189 (このIDを非表示/違反報告)
吉羅 - すごく泣けます!(泣いてないけどw)沖田が手紙と花束を渡すとこ、あれが1番良いです。結婚完結もよかったです!これからも頑張ってください!! (2019年6月3日 16時) (レス) id: 2c9031588c (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 金欠女子wさん» 読んでいただいて、ありがとうございます! (2019年1月10日 22時) (レス) id: f591e17e69 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - すずさん» いつも、ありがとうございます! (2019年1月10日 22時) (レス) id: f591e17e69 (このIDを非表示/違反報告)
金欠女子w(プロフ) - 更新お疲れ様です! (2019年1月10日 21時) (レス) id: 5ee93ef12b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mifulu | 作成日時:2018年11月8日 23時

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