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『亮ちゃんから連絡先教えてもらった』
大倉くんからのメッセージの通知にじっと考えてからトーク画面を開く。
また、勝手なことを。
亮に余計なことを言ったりしてないだろうか。
嫌味のひとつでも込めた返信をしようかと思ったけど頭が重くてそんな気力もない。ただぼうっと画面を見てると、今度は電話がかかってきて私は多少構えながらも電話に出た。
「…もしもし。」
泥のように眠った後の声はびっくりするほどかすかすだった。
「起きてたんや。」
親しい友達と話すみたいフランクな口調――関西弁だからそう聞こえるだけなのだろうか――で電話の向こうの大倉くんはしゃべるから、私も無遠慮に不満を返そうとしてしまったけれど、その勢いを飲み込む。
いくら相手がデリカシーがないからといって、私も同じように返してしまっては同等になってしまう。
日頃から会社でも何度もそうやって言いたいことを堪えてきたから、熱っぽい頭でも自然とそんなことを考えていた。
「…さっき目覚ましたとこ。」
「具合、どうなん?」
「…あんまり変わらないかな。」
「病院行ける?」
私はつい、大きくため息をついてしまった。電話の向こうまで聞こえるくらい。
そういえばそうだ。
今朝主任との電話を勝手に取られて、勝手に『病院で診断が出たらまた連絡する』みたいなことを言っていた。
「行けるって、そっちが勝手に病院行くって言っちゃったんじゃん。」
まるで喧嘩を覚えたての子供のように言ってしまって、しまった、と思った私に、
「やから電話かけたんやん。」
大倉くんは平然とそう言った。
「今朝勝手に会社にあーやって言うてもうたから一応責任とらなあかんなと思って。別に仲ようしたくて連絡先教えてもろうたんとちゃうから安心してや。」
ひねくれているというか、やっぱり不躾というか、どうにも癪に触る言い方。最後の余計なひとことが憎たらしい。
私だって、大倉くんと仲良くしたいなんてちっとも思わないんだから。亮にも変わったところはあるにしろどうしてこんなひとと仲が良いのか疑問だ。
「……そうですか。」
「5時には仕事終わんねん。行けるんやったら車あるし送迎するけど、どうする?」
できれば借りなんて作りたくないけど、今日中に主任に連絡しないとまた後でめんどくさそうだしひとりで行くほどの体力も気力もない。
渋々私は首を縦に振った。
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蒼 夢見子(プロフ) - すぅさん» すぅ様、初めまして。コメントありがとうございます^^私には勿体無くも有難いお言葉いただけてとても嬉しいです(涙)これからも楽しんでいただけるものを書けるよう頑張ります! (2018年12月3日 11時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ(プロフ) - こんばんは。今まで読んできた小説のなかで一番素敵な物語です。これからも応援しています (2018年12月3日 0時) (レス) id: 6e6892a55b (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、こんにちは。こちらにもコメントいただけてとっても嬉しいです...(涙)この間とはすこし違ったいたずらで甘い大倉くんを書きたいなーと思い書き始めました。そう言っていただけると俄然執筆への意欲が湧いてきます!ありがとうございます^^ (2018年11月21日 10時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - こんにちは!こちらのお話にもコメント失礼します。優しいんだか冷たいんだか分からない大倉くんとっても魅力的です好きです(;_;)ヒロインちゃんが幸せになれることを密かに願いながら応援しております、、、! (2018年11月21日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年11月13日 22時