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知らないうちにまたため息をついていた。
なにひとつ、上手くいかない。
私、こうやって歳を重ねて死んでくんだろうか。
部屋に戻り眠って朝がくれば、また仕事。
その時にはせめて体調が戻っていればいいけど、そんな気はしないし、今日残してしまった仕事があるから、明日は早退はおろか定時でも帰れないだろう。
彼のことはどうしよう。向こうは私に気づいていなかったから今まで通り連絡をしてくるかもしれないけど、ちゃんとけじめをつけなければいけない。話すのにも気力がいるから今は無理。
考えるだけで疲弊してしまうことばかり。
なにか、癒しがほしい。それも、すぐなくなってしまったり薄まっていかないような絶対的な癒し。
発泡酒の缶をゆらゆら振ってみると中身はもうなくなっていた。アルコールのおかげかすこし眠たくなってきたし、アルコールのせいなのか頭痛が増したからそろそろ引き上げようとした時、煙草のにおいがすぐ近くでした。
おどろいて周りを見渡すと、屋上の角に寄りかかって煙草を吸っているひとがいた。背の高い、男。
いつの間にか。
誰かが上がってきたことになんて、全然気づかなかった。いつからそこにいるんだろう。
私がそちらを見ているのに気がついたのか、そのひとは煙草の煙を吐き出しながらこちらに顔を向ける。
そんなに広い屋上ではないし、なんせ今日は月明かりが眩しいくらいだから、そのひとの姿がよく見えて、そして私はどきっとしてしまう。
ときめきのそれではない。
思わぬところで知り合いに会ってしまったときのそれだ。
だけど、そのひとはすぐにふいっと私から視線を逸らしまた煙草を吸い始めたから、すこしだけほっとして足音すらたてないよう静かに出口に向かおうとした、のに――…
「その缶、捨てるんやったら貰えへん？」
ドアノブを掴んだとき、背後から声をかけられた。
「……え？」
振り返ると細く煙をあげる煙草を持ちながら、片手はスウェットのポケットに入れて近づいてきた。
「灰皿忘れてん。それ、もう入ってへんねやろ？」
そして私の目の前まで来ると右手に持っていた空き缶を指差した。
「…ああ、…はい。」
動揺しながらも缶を差し出すと「どーも。」と受け取り、煙草を缶の中に落とす。
このひとは、私のことを覚えているのか、それとも覚えていないのか、よくわからない。
ゆらりと吹いた生ぬるい風が甘めの柔軟剤のにおいを運んできた。
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蒼 夢見子(プロフ) - すぅさん» すぅ様、初めまして。コメントありがとうございます^^私には勿体無くも有難いお言葉いただけてとても嬉しいです（涙）これからも楽しんでいただけるものを書けるよう頑張ります！ (2018年12月3日 11時) (
レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ(プロフ) - こんばんは。今まで読んできた小説のなかで一番素敵な物語です。これからも応援しています (2018年12月3日 0時) (レス) id: 6e6892a55b (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、こんにちは。こちらにもコメントいただけてとっても嬉しいです...（涙）この間とはすこし違ったいたずらで甘い大倉くんを書きたいなーと思い書き始めました。そう言っていただけると俄然執筆への意欲が湧いてきます！ありがとうございます^^ (2018年11月21日 10時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - こんにちは！こちらのお話にもコメント失礼します。優しいんだか冷たいんだか分からない大倉くんとっても魅力的です好きです（；＿；）ヒロインちゃんが幸せになれることを密かに願いながら応援しております、、、！ (2018年11月21日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2018年11月13日 22時
