満月の夜に 【Ryosuke.Y】

10 ページ11

.





合格発表から1週間後________






会おうね、って約束してた昼12時




俺はいつものように、
Aんちのチャイムを鳴らした









A母「はーい。

あっ、…涼介くん……」



「A居ますか？約束してて。」






A母「あ、あのね。
実はA、…留学したの……」






「は…い？」








それはまるで、
頭を思いっきり殴られたような衝撃だった






なん…で？


俺に何も言わずなんて…おかしいだろ？







A母「ごめんね…？Aが、涼介くんに言っちゃうと反対されるから、…って……」




「本当なんですか？それ…」







だっておかしい…だろ



あいつは体が弱いんだよ？
なのに留学なんてさせるか、普通？
　






「Aどこに居るんですか？
俺、迎えに行きます。」







A母「それは…言えないわ。
あの子、本当にやりたい事が見つかったって喜んで行ったから…
お願い。涼介くん、Aが帰ってくるまで待っててあげてくれないかしら…？」






なんだよそれ…


ここで引き下がらなかったら、
俺Aの事を
ちゃんと考えてない男みてーじゃん…





そんな変なプライドが俺を邪魔して…







「わ、わかりました…
そのかわり、Aから俺に連絡するように伝えてください。」







この時、俺が引き下がらなかったら






…少しは違う未来があったのかな？









今更後悔したって遅いよな…






けどその後、
"A"と一度も表示される事のなかった
携帯電話のディスプレイを見つめ





俺は泣きながら、
あいつの事を諦めた…







　

Aはもう、
俺とは違う人生を歩んでいるんだよな？
幸せなんだよな？



　

なら、俺も違う人生を歩もう、って…








Aを忘れるため


ただ、ひたすら泣いた日






その日はちょうど、
Aが居なくなってから、2年目の春だった







．

11→←09

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す