31.飛べ ページ34
「せーの」
私と潔子で端と端を持って、ギャラリーの柵のところにアレをかけた。
……それは、『飛べ』と書かれた黒い横断幕。右斜め下には『烏野高校男子バレーボール部OB会』と記されてある。
「こんなのあったんだ……!」
「掃除してたらAが見つけて」
「洗ったら使えそうだよねって話して、きれいにした」
「うおおお!! 燃えてきたァァ!!」
「さすが潔子さんとAさん、良い仕事するっス!!」
田中と西谷が叫んでいるところで、私は少し眉を下げて潔子と目配せをする。
____あれ本当にやるの?
____……やる。
____タイミングとか……
____とりあえず勘で……
____まじ……?
「……が」
潔子がこれから言う言葉にあわせて私も口を開く。結構これ気恥ずかしいんだけど……。
「「……がんばれ」」
部員の前で初めてこんなこと言ったから耐えきれなくて、潔子の手を引っ張って早々とギャラリーを去る。
「清水っ……浦塚っ……!! こんなのハジメテッ」
「……っ……! ……っ……!! ……!!!」
「うおおおん」
「うわああん!」
「ちょっと何コレ収集つかないんだけど!」
「一回戦、絶対勝つぞ!!!」
「うおおおス!!!」
……とまあ、やる気が出たようなので、ま良かった……と、思う。
*
「いやー、まさか清水と浦塚があんなことしてくれるなんて……」
「そろそろ泣き止みなよ……」
帰り道、未だに涙をハンカチで拭いている菅原に若干呆れる。
みんな(特に田中と西谷)はすごくマネージャーを慕ってくれているけれど、潔子はともかく、私に慕われると正直困る。
私は、誰かに慕ってもらうような人間じゃないから。
「一回戦も二回戦も全部勝って二日目行くべー!」
「……うん」
「『がんばれ』はもう言ってくんないの!?」
「もう無理」
「ケチ」
「うるさい」
そう言ってそっぽを向くと、不意に菅原の手が伸びてきて、まるで小さい子を扱うかのように髪をわしゃわしゃと撫でてきた。
「……私、もうそんな小さくないんだけど」
「んー? 知ってるけど」
なんかムカつくな、なんか。
身長差だって20cmもないのに。
「……なー、浦塚」
「何」
菅原は髪を撫でていた手を引っ込めて、穏やかに笑って言った。
「……一緒に、全国行こうな」
その言葉に、私は何も思わずとりあえず頷くだけ頷いておいた。
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昆布の神(プロフ) - 虹四葉さん» コメありです! 烏野大好きです……。おまけ話みたいになるんですけど、浦塚さんはお勉強をよくしているので甘党という設定になっていて、それゆえに悩みがあんなエグいことになっています() (2021年9月3日 22時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
虹四葉(プロフ) - コメント遅れたけど、烏野メインは最高です昆布様。あと、浦塚さん.....ココアにキットカットは流石に甘すぎるのでとりあえずヤバイっす。 (2021年9月3日 22時) (レス) id: 550a2fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2021年5月4日 8時