XIX ページ21
「ほら」
「……ありがと」
私の家より田中の家の方が公園から近かったという衝撃的事実により、田中の家に上がらせてもらいタオルを借りる。
「……家、誰もいないの?」
辺りを見渡すが、この家に人の気配が無い。
玄関にも私たちの靴以外何も無い。
「仕事だから」
「そうなんだ……」
光輝と同じ……。
……駄目だ。ことある度に光輝のことを思い出してしまう。
「……あの時の光輝……笑ってた。まるで何の悔いも無いみたいに……」
「アイツはさ……」
田中がそっぽを向いて言う。
「お前に笑ってほしかったから死んだんだよ」
「……笑えるわけないじゃん」
人が死んで笑える人なんていない。
いるとしたら極悪な殺人犯だけだ。
「まあ、そうなんだけどさ……。アイツ、たぶん最期にカッコつけたかったんだよ。
“命が尽きるまで必死に生き抜いた主人公”とかじゃなくてさ、
“好きな子を笑顔にするヒーロー”になりたかったんだ。お前を主人公にしたかったんだよ。
……自分でも何言ってるか分からないけど」
私は何故かその言葉に共感することができてしまった。
私は、あの本を使って二年前へ来た。
光輝に好きだと言うために。
だが、私が二年後から入ったこの世界は、私の物語ではなく、光輝が死ぬまでの物語だ。
紛れもなく、この物語の主人公は光輝だった。
しかし光輝は、その主人公の座を蹴って私に託そうとしてくれたというのだろうか。
それとも、ただの自意識過剰だろうか。
「だからさ……次はお前が……」
田中はそれ以上続けなかった。
『
光輝の次の物語を継ぐ、主人公にならないと。
「……そういう、話だったんだ」
これは、私が主人公になるまでの、物語だったんだ。
焦燥に浸りながら目を閉じると、私の意識はそこで途切れた。
……
そういえば、二年後に星が降ってきたのは、ちょうどこのくらいの時間だったなあ。
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花恋(プロフ) - 泣きました!本当に感動しました。!本当に作者様すごいです! (2020年10月26日 19時) (レス) id: beb1340a63 (このIDを非表示/違反報告)
りんご昆布の神(プロフ) - 鸞鳥さん» そう言って頂けて嬉しいです!更新頑張ります! (2020年10月9日 16時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
りんご昆布の神(プロフ) - 爽@三人娘。さん» ありがとうございます!ご期待に添えるように頑張ります! (2020年10月9日 16時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
りんご昆布の神(プロフ) - 花蝶霞☆奏音さん» いつも、ありがとうございます!皆さんに面白いと思って貰えるような小説を心がけていきます! (2020年10月9日 16時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
りんご昆布の神(プロフ) - りなりんさん» この作品に似合うcssだったので即お借りさせて頂きました笑 (2020年10月9日 16時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんご昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2020年10月6日 15時