あの日、見た星に願いを。【オリジナル】 (ページ16)

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XIV ページ16

「疲労、といったところかしら。たぶんね」

保健室の先生が、ベッドで寝息を立てる光輝の顔を見ながら言う。

「疲労……」

風邪の影響……？
いや違う。もう風邪からは充分日が経っている。
そしたら、どうして……

「……。私、少し外すわね。用事があるの」

「あ、はい。ありがとうございます」

去り際に先生に会釈をしておく。
さっきの間は一体なんだ……。

「……光輝」

もう一度、少し青ざめた顔をしている光輝を見る。
最近、野球部にもまったく顔を出していないらしい。光輝は自ら命を絶った。
精神的に、何か心配事とか……

「……ん」

「あっ……光輝？」

光輝が、いつもは大きい目を薄く開ける。
どうやら目が覚めたらしい。

「……俺、倒れた？」

「うん。ほんとビックリした」

頷くと光輝の青い顔がさらに青ざめる。

「あ、あのさ、光輝」

光輝に話しかけてみると、光輝は少し冷たい目で私を見た。
まるで突き放すような。入り込んでくるなと言っているような。

私の声の源は喉で寸止めされてしまった。

そんな目で見られては話せない。
……というか、そもそも『何か悩みでもある？』なんて簡単には聞けない。

何の事情も、都合も知らない人が勝手に心の中に入り込んで同情だなんて、プライドの高い光輝にとっては侮辱でしかない。

「……た、体調……」

「これくらい何ともないから」

「……そっか」

どんどん敬遠されていく。
どんどん突き放されていく。

───────怖い。

拒絶されるのが怖いんじゃない。
光輝が私の知らない場所に行ってしまうのが怖い。

「保険の先生どこ？」

「さっき此処出ていったから……たぶん職員室とか」

「わかった」

素っ気なく返事をして保健室を出ていってしまった光輝を振り返ることも出来ず、私はただ一人で部屋に立ち尽くした。