人魚姫 XIV ページ16
『雨……止んだね』
隣で呟いたAは少し嬉しそうに目を細めた。
碧晴と見たい、と言ってくれたことに碧晴もまた、嬉しさを感じていたが、やはりAが考えていることはよくわからなかった。
『もうすぐ日が昇るね』
そう話しかけるとAは嬉しそうな笑顔で「うん」と頷いた。
『初めて見る……』
『そうなん……だ……』
碧晴は愛しい彼女の言葉に疑問を覚えた。
……"初めて"?
いくらなんでも、太陽を初めて見るというのはおかしい話なのではないだろうか。
どういうこと、だ……?
その瞬間、碧晴は背筋がゾッとする感覚を覚えた。
これは──────……
「っA……」
『あ!太陽昇ってきたー!』
Aは無邪気に太陽を指差した。
(駄目だ)
何故か碧晴は本能的にそう思った。
きっとこれは、自分の危機じゃない。
彼女の──────……
しかし、碧晴が彼女の名前を呼ぶのは遅かった。
『ありがとう、碧晴。一緒に見てくれて』
そう言った彼女の顔は残酷で、恐ろしいほど無邪気な笑顔だった。
『A……!!』
最後に聴こえてきたのは、
Aと初めて会った日に歌っていた……
『忘却の泡の華。幻の夢を小宵、祈り続けて』
『夢とて、消える』
────────────────────────
ハッと目を覚ますと、それはいつもと変わらない家の天井だった。
碧晴はゆっくりと体を起こす。
なんだか体が痛い。
昨日、何かしたのだろうか……
「昨日……?」
首を傾げると、うるさい母の声が聞こえてきた。
「碧晴!起きなさい!今日から学校でしょー!!」
カレンダーを見ると確かに九月になっていた。
いや、それより
(……昨日、の記憶が無い?)
「俺……」
「碧晴ー!!」
(うるせえ……)
「今行く」と適当な返事を返し、碧晴は布団から出た。
その時の碧晴には、もう違和感の一つ何も無かった。
碧晴の部屋の一角には『人魚伝説』という一冊の本が置いてあった───────。
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鮭の神様(元 レオ)(プロフ) - すごい…!!私の好きな綺麗な世界観…!更新お疲れ様でした! (2020年6月14日 23時) (レス) id: 86c31a4b24 (このIDを非表示/違反報告)
昆布(プロフ) - 日向鬼@低浮上さん» ありがとうございます。「綺麗」と言ってもらえて嬉しいです〜! (2020年6月6日 20時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
日向鬼@低浮上(プロフ) - もう凄いわ僕((本当に題名で当てられるようになった…待ってました!(ドンドンパフパフ)昆布さんのお話は綺麗でなんかお話し読んでて楽しい(?)から大好き!頑張って! (2020年6月6日 20時) (レス) id: 98b52071c9 (このIDを非表示/違反報告)
昆布の神(プロフ) - テイル@パピコ同盟さん» ありがとうございます。ちょっといろいろと勉強しました〜 (2020年6月6日 19時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
テイル@パピコ同盟(プロフ) - 夢主の画力が良すぎィ↑私には到底辿り着けないような境地だぁ!そして文章力も圧倒的に上がってきている!羨まし! (2020年6月6日 19時) (レス) id: a6ac34b766 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon723/
作成日時:2020年6月6日 18時